iPadなどのタブレット端末で読むことができるeBookで、日本で初めてeBookが導入されたときには、AHAからインストラクター宛に通達があって、eBookでも受講できることを積極的に受講者にPRしてほしいなんて言われたものです。
電子書籍は配達のタイムラグがなく、注文してからすぐに読める点や、書籍版より値段が安い、PALSプロバイダーマニュアルのように分厚い本の場合は保管や持ち歩きの負担を考えるとメリットはあるものの、結論的にはあまりおすすめしません。
理由はいくつかありますが、最大の問題は、講習を受講中の参照資料としてはほとんど使い物にならない という点です。
AHAは教材設計上、講習中に参照する教材としてもプロバイダーマニュアルを位置づけています。安くはない本をわざわざ買ってもらうわけですから、インストラクターとしては、講習中は極力テキストを使うようにしています
「◯◯ページの◯◯行目をご覧ください」
講習中は何度もテキストを見てもらうようにしています。
こんなとき、電子書籍だとページめくりに時間がかかるため、書籍版と電子版が混在したときに、電子書籍の人は間違いなく遅れをとる、というか目的ページにたどり着けないことがほとんど。
というのは、電子版と書籍版ではページ数や行数が異なっている場合があるからです。
講習を運営する側としては、はっきり言って大迷惑。
講習で大事なテンポ感は完全に損なわれますし、無駄な時間…
結局、インストラクターのテキストを開いて見せてあげる形で進んでいき、最終的には電子書籍の受講者は講習中にタブレットを見るのを放棄するのが常。
もう一度言います。
講習中に参照する資料としては電子書籍は使い物になりません。
講習中はDVDを流すだけで、テキストなんか開かないよというレベルのインストラクションであればどうでもいいところなのかもしれませんが、インストラクショナル・デザインに立脚した教材設計を考えたら、インストラクターとしてはここは譲れない部分です。
紙媒体の本を買えば、それはある意味一生モノです。
しかし電子書籍の場合、プラットフォームが変わったり廃れたりすれば読めなくなります。
ガイドライン自体は5年毎に変わっていますので、永続的な価値はないから関係ないと言えるかもしれませんが、歴史という点では大いに意義があると思っています。現にいまでもG2000版のBLSプロバイダーマニュアルは、蘇生法の指導員であれば永久保存版とも言うべき第一級の資料です。
これは紙媒体であるからいまでも古本として手に入るわけで、今後、AHAが電子書籍onlyとしてしまったら、歴史が失われると言っても過言ではないと思っています。
現時点、最新のG2020版のBLSプロバイダーマニュアルは電子書籍版のみ販売されています。
このあと書籍版も発売されるようですが、その時期は明らかにされていません。
いま、無理して電子書籍を買うのではなく、書籍版の出版を待ってもいいんじゃないかなと思います。
以上、インストラクター側の視点として書かせていただきました。