ただ注意しなくてはいけないのは、AHA-BLSコースは、アメリカの蘇生ガイドラインに基づいて作られているという点。
ここは日本です。そもそも蘇生ガイドライン自体が米国とは違うんだという認識が必要です。
ぶっちゃけで言えば、日本国内で異国の救命講習が大手をふるって開催されているということ自体がおかしいわけです。日本には日本蘇生協議会JRC蘇生ガイドラインという立派なものがあるのに、それに準拠した日本版BLS講習(プロ向け)が組織化されていないのは、国策としてはどうなんでしょう?
日米のガイドラインの違いなんて、受講者が知るよしもありませんから、このガイドラインの違いに注意してコース展開するのはインストラクターの役割であり、責任です。
■ 小児パッドの適応は日米で違う!
例えば、AEDの小児用パッドの適応は?
という点で、
8歳未満
と教えているAHAインストラクターが、2020年の今になっても存在している模様。(つい最近も AHA-BLSインストラクター と称する Youtuber が、動画の中で堂々と間違ったことを教えていました)
アメリカの教材の直訳である BLSプロバイダーコース DVD をただ流すだけの講習だと、受講者はふつうにそれが刷り込まれちゃいますよね。
テキストを見ても、成人用パッドは8歳以上、小児用パッドは8歳未満とはっきりと書かれていますし。(本当は翻訳と日本語版制作の責任も問いたいところですが、それはまた別の項で)
しかし、ここは日本! JRC蘇生ガイドラインではG2010以降、日本では8歳未満ではなく、就学年齢未満に小児パッドを使う ように変更されています。
2004年〜2009年までは、日本でも8歳未満で良かったのですが、5年間やってみたら、小学校が困っちゃったんです。
小学校2年生までは小児パッドを使って、3年生以上は成人パット。小児パットという割にはややこしいじゃん! って話。
そこでガイドライン2010の改定のときに、日本では小学校に上がったら成人パッドでいいよ、とガイドラインが改定されたのです。(米国は変わらず)
■ インストラクターの責任と倫理
ここは日本です。しかもAEDは高度管理医療機器であり、除細動はまぎれもない医行為。それを医師以外が実施する以上、法律に基づいた使い方をしないと医師法違反阻却要件から外れます。
AHA講習であっても、日本国内で教える以上、正しく伝えなければいけない部分です。これは指導員としての倫理と責任です。
日本で8歳から就学年齢に変わってから、すでに10年近く経とうとしています。
未だに8歳未満という教え方をしているインストラクターは、このことを知らないのでしょうか?
昔は、AHA講習はAHAガイドラインの範囲外のことを喋っちゃいけないみたいなルールがあったという話も聞きます。
しかし、少なくともG2015の教材改定で、地元でのローカルルールを優先するという方向性が明確に示されましたし、インストラクターはローカル・プロトコルにも習熟している必要がある点が、BLSインストラクターマニュアルにも書かれています。
このガイドラインの変化についてこれていない「昔取った杵柄」インストラクター、なのでしょうか?
法律行為を教えるにも関わらず、日本の法律をはっきり伝えないというのは、受講者に対して不誠実な背任行為ともとも言えます。
だって、その教えによって、人の生死が変わるかもしれないし、間違ったことを教わった受講者が訴追されることもあるですから。
救命法の指導員は、責任のあるプロとしての仕事だと思っています。無責任なボランティアでやるようなものじゃない!
BLSプロバイダーコースを受講した皆さん、AED使用の日米の違いについて、インストラクターはちゃんと説明してくれましたか?
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