2019年がやってくるわけですが、この年末年始はAHAインストラクターにとっては、特にざわつく落ち着かないときかも知れません。
2019年1月以降は、成人CPR講習にフィードバック装置を使うことが義務付けられるからです。さらには、eCardへの切り替えを検討しているトレーニングセンターも多いことでしょう。
フィードバック装置に関して言えば、世界中のすべてのAHA講習に適応されますので、いまはフィードバック装置追加購入の駆け込み需要で、品薄状態となっているようです。先日、米国のディストリビューターに問い合わせたインストラクター仲間は3ヶ月待ちと言われたそうです。
AHAとしては、今回のフィードバック装置必須化のために2年前からアナウンスを始めて、その有用性のPRに努めてきました。
質の高いCPRを追求すべきなのは言うまでもありません。
その質を主観的評価にするのではなく、定量的に評価しましょう、といわれているのがACLS。
ACLSでは胸骨圧迫の質に関して、100〜120回/分とか少なくとも5cmというある救助者側の主観的な評価ではなく、呼気終末二酸化炭素濃度や、拡張期血圧といった生理学的な代理指標に着目した科学的な質コントロールが提唱されています。
そういった科学的な定量的評価と、徒手空拳的なBLSの主観的な質評価の間に位置するのがフィードバック装置です。
深さ、テンポ、戻り、中断時間などを表示し、修正の指示をくれる機種もあります。
非常に有用な道具ではあるのですが、トレーニングにおいて使用する場合は注意が必要、と私は考えています。
日頃から離床でフィードバック装置を使っている施設でのBLS講習はすべての練習においてフィードバック装置を使うべきでしょう。
しかし、皆さん、ご存知の通り、フィードバック装置を臨床でルーチン使用している施設はごくごく一部です。
現場で使わない道具であるフィードバック装置を練習で使う意義。
これは、練習者が自身のCPRの質を、インストラクターの主観ではなく、客観的に自己評価できるという点では意義があるでしょう。
しかし、大事な視点として、現場にはフィードバック装置はない、というのを忘れてはいけません。
講習中に終始、フィードバック装置を使用すると、受講者はフィードバック装置のメーターに依存するようになります。
これは、BLSプロバイダーコースの10分間のチーム蘇生の場面でフィードバック装置を使うと顕著です。眼の前で繰り広げられるCPRではなく、モニター画面をじっと見るようになるのです。
ACLSでは、モニターばかり見るな! とはよく言われますが、おなじ現象がBLSでも起きてしまうというのは皮肉な話です。
AHAとしてはフィードバック装置をコース中、使わなくてはいけない、とは言っているものの、具体的にコース中のどの場面で使うのかという具体的な指示はありません。
どの場面でどう使うかという点をインストラクターはよく考えたほうがいいでしょう。
フィードバック装置は自己点検的に使いつつ、最終的には機械を頼らなくても自身の勘どころとしての圧迫のテンポを身につけられるように指導をすべき、と私は考えています。
その目的のための補助装置として活用するならフィードバックは極めて有用なものでしょう。
インストラクター側の認識と使い方によっては、受講者のCPR能力を潰すことにもなりかねない。
そんな本気度をもって、インストラクターはフィードバック装置の活用法を真剣に考えないといけません。