ファカルティやコースディレクター、熱心なインストラクターは、すでに英語版を手に入れて内容を把握しているかと思いますが、やっぱり日本語になっていると、パラパラと一覧できて便利ですよね。
さて、ここで改めてG2010版から変更になった点や、見逃してはいけない部分をピックアップしてみたいと思います。
スキルチェックのポイントや筆記試験のオープンリソース化(テキスト類持ち込み可)については、過去のブログエントリーで取り上げているので、そちらをご覧いただくとして、、、
試験に関することは31ページから書かれています。
1.オープン・リソースで参照できる資料は?
BLSインストラクターマニュアル31ページには次のように書かれています。「オープンリソース」とは,受講者が試験を受けている間参考教材を利用してもよいという意味である。参考教材には,プロバイダーマニュアルの印刷版または個人のデバイスで閲覧できるeブック,受講者がプロバイダーコース中に記録したメモ,ECCハンドブック, 『AmericanHeartAssociation心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドラインアップデート2015(2015AHAGuidelinesUpdateforCPRandECC)』,ポスターなどが含まれる。
ポイントは、「など」が含まれるという表現でしょうか。
ここに列記されているAHA情報源に限らず、その他の書籍もOKと私は理解しています。
ネット検索は? という疑問も出てきますが、タブレット端末の使用が認められていることから否定はできないなと思っています。
そして試験が資料持ち込みであることをいつ受講者に伝えるかという点については、メールや郵便での受講案内の時点で受講者に示しておくように書かれています。
2.呼吸・脈拍の確認は同時でなくても構わない
これはプロバイダーマニュアルにも載っているスキルチェックシートを見れば分かる点ですが、実技試験においては、脈拍と呼吸の確認を別々に行って、それぞれに10秒(すなわち計20秒)かけても実技試験には合格するようになっています。傷病者発見から胸骨圧迫開始までが30秒以内であればよいという規定があるからです。つまり、G2010の手順でやってもG2015基準で合格します。
教え方としては、呼吸と脈拍を同時確認することが推奨されていますが、どうしてもこれまでの癖が抜けないという人もいるかもしれません。そんなときは、スキルチェックシートのこのゴール設定を理解していることが重要になるかと思います。
3.成人一人法で使う人工呼吸器具は受講者の現場に合わせて選択する
インストラクターマニュアル34ページに書いてありますが、成人へのBLSの実技試験では、有効な人工呼吸を行うことが求められていますが、使うデバイスは指定されていません。受講者の現場で実際に使うであろう器材を使えということになっています。となると、受講者のうち、大方の人は現場にはポケットマスクがない状況かと思いますので、現実的にはバッグマスクという選択になることでしょう。そこで、バッグマスクを一人法で使うことも許容される点が明記されています。ただし、ご存知の通り、一人法ではバッグマスクの使用は胸骨圧迫の中断時間という点で難しいです。そのことを強調した上で受講者に、BVMなのかポケマなのか、フェイスシールドなのかを選ばせることになります。
4.チャレンジオプション
これはG2010から変わっていない部分ですが、あまり知られていないので取り上げました。プロバイダー資格は有効期限2年ですが、それを更新するにはどうしたらいいか? という話の中で、チャレンジオプションという選択肢が設けられています。
一言で言えば、コースを受講しなくても、実技試験と筆記試験だけを受けて合格すれば新たなプロバイダーカードが発行されるという制度です。そのための条件がいろいろありますので、そこはインストラクターマニュアルの48ページをご覧ください。
なお、新教材リリースに伴い、2017年11月までは、このチャレンジオプションは凍結されます。それまでの間は、新しいコースDVDを使った受講が求められます。ざっくりいうと、1度は必ず新コースを体験しろ、ということです。
5.インストラクターへのリクルート 16歳以上から
これも前回のインストラクターマニュアルにも書かれていた点ですが、プロバイダーコース終了後にインストラクターになりたいという人がいたら、時間をとって説明しろということが49ページに書かれています。ハートセイバー・インストラクターならびにBLSインストラクターの最低年齢制限は16歳であることも明記されています。
最近、知ったのですが、日本でも高校生でAHAインストラクターになった人が、2人はいるようです。しかも別のITCで。
6.インストラクター資格の更新条件
今回、新たな記載として入ってきたのが、インストラクター資格を更新するときの条件が明記されたという点です。これまではファカルティガイドやPAMに書かれていたことがインストラクターマニュアルにも記載されるようになりました。インストラクタースキル証明のためのモニターができるのはファカルティである点が明記され、2年間に4回の指導実績についてもきちんと定義されています。
これはこれまでと変わったところではないのですが、知らないインストラクターも多そうなので紹介しておくと、BLSインストラクターとしての必要単位は、ハートセイバーコースでの実技指導・スキルチェックでもカウントできますし、PALS、PEARS、ACLSコースでのBLSセクションを担当することでもカウントできます。
7.デブリーフィングとフィードバック
BLSの実技指導技法としてのフィードバック。これはいまさら言うことはないでしょう。ダメ出しすればいいわけではないし、褒めればいいわけでもなく、インストラクターの働きかけが相手の行動変容につながり、正しいセットポイントで安定した動作が行えるようになるような支援のことをいいます。G2015で新しく入ってきた指導技法がデブリーフィング。これはただ機械的に行動が是正されればいいだけではなく、内省を促して考え、判断して行動するスキルを醸成するための指導技法です。
ACLSやPALSではあたりまえの話なのですが、ここまでハイレベルなことをBLSでも求めるようになったのか、というのが今回の改訂の山場でもあるかと思うのですが、インストラクターマニュアルの説明はあまりに貧弱。
いちおう21ページに記載がありますが、これを読んでも、「だから何?」という感じでチンプンカンプンだと思います。
いま、新たにBLS Instructor Essentialsが開発されています。2017年3月までにリリースされる予定ですが、それに合わせてインストラクターコースも刷新されて、そこできっときちんとしたデブリーフィング訓練が盛り込まれるのではないかと思います。
こんなあたりがインストラクターマニュアル前半部分の見どころかなと思います。
後半のレッスンプラン(以前でいうレッスンマップ)部分に着目しても興味深い劇的な変更点がいくつもあります。ここについてはDVDを見ないことにはイメージ付かない部分が多いので、またこんど取り上げようと思います。
いずれにしても、まだBLSインストラクターマニュアルG2015を手に入れていない人は、早々に入手して、がらりと新しなったG2015 BLSコースを一日も早く自分のものにできるようにしていきましょう。