歴史が詰まっているので削除はせずにいますが、今後、もうちょっと活用法は考えていきたいですね。
*ブログ記事の過去ログ一覧は こちら です*
2022年06月18日
最近更新していませんが、、、
ガイドラインも変わったし、書くネタはいろいろあるのですが、別のところで書いてしまって、ついついこちらはおろそかに。
歴史が詰まっているので削除はせずにいますが、今後、もうちょっと活用法は考えていきたいですね。
歴史が詰まっているので削除はせずにいますが、今後、もうちょっと活用法は考えていきたいですね。
2020年12月05日
AHAの電子書籍をおすすめしない理由
AHA講習受講に必須のプロバイダーマニュアルは、G2015版から電子書籍でも日本語で入手できるようになりました。
iPadなどのタブレット端末で読むことができるeBookで、日本で初めてeBookが導入されたときには、AHAからインストラクター宛に通達があって、eBookでも受講できることを積極的に受講者にPRしてほしいなんて言われたものです。
電子書籍は配達のタイムラグがなく、注文してからすぐに読める点や、書籍版より値段が安い、PALSプロバイダーマニュアルのように分厚い本の場合は保管や持ち歩きの負担を考えるとメリットはあるものの、結論的にはあまりおすすめしません。
理由はいくつかありますが、最大の問題は、講習を受講中の参照資料としてはほとんど使い物にならない という点です。
AHAは教材設計上、講習中に参照する教材としてもプロバイダーマニュアルを位置づけています。安くはない本をわざわざ買ってもらうわけですから、インストラクターとしては、講習中は極力テキストを使うようにしています
「◯◯ページの◯◯行目をご覧ください」
講習中は何度もテキストを見てもらうようにしています。
こんなとき、電子書籍だとページめくりに時間がかかるため、書籍版と電子版が混在したときに、電子書籍の人は間違いなく遅れをとる、というか目的ページにたどり着けないことがほとんど。
というのは、電子版と書籍版ではページ数や行数が異なっている場合があるからです。
講習を運営する側としては、はっきり言って大迷惑。
講習で大事なテンポ感は完全に損なわれますし、無駄な時間…
結局、インストラクターのテキストを開いて見せてあげる形で進んでいき、最終的には電子書籍の受講者は講習中にタブレットを見るのを放棄するのが常。
もう一度言います。
講習中に参照する資料としては電子書籍は使い物になりません。
講習中はDVDを流すだけで、テキストなんか開かないよというレベルのインストラクションであればどうでもいいところなのかもしれませんが、インストラクショナル・デザインに立脚した教材設計を考えたら、インストラクターとしてはここは譲れない部分です。
紙媒体の本を買えば、それはある意味一生モノです。
しかし電子書籍の場合、プラットフォームが変わったり廃れたりすれば読めなくなります。
ガイドライン自体は5年毎に変わっていますので、永続的な価値はないから関係ないと言えるかもしれませんが、歴史という点では大いに意義があると思っています。現にいまでもG2000版のBLSプロバイダーマニュアルは、蘇生法の指導員であれば永久保存版とも言うべき第一級の資料です。
これは紙媒体であるからいまでも古本として手に入るわけで、今後、AHAが電子書籍onlyとしてしまったら、歴史が失われると言っても過言ではないと思っています。
現時点、最新のG2020版のBLSプロバイダーマニュアルは電子書籍版のみ販売されています。
このあと書籍版も発売されるようですが、その時期は明らかにされていません。
いま、無理して電子書籍を買うのではなく、書籍版の出版を待ってもいいんじゃないかなと思います。
以上、インストラクター側の視点として書かせていただきました。
iPadなどのタブレット端末で読むことができるeBookで、日本で初めてeBookが導入されたときには、AHAからインストラクター宛に通達があって、eBookでも受講できることを積極的に受講者にPRしてほしいなんて言われたものです。
電子書籍は配達のタイムラグがなく、注文してからすぐに読める点や、書籍版より値段が安い、PALSプロバイダーマニュアルのように分厚い本の場合は保管や持ち歩きの負担を考えるとメリットはあるものの、結論的にはあまりおすすめしません。
理由はいくつかありますが、最大の問題は、講習を受講中の参照資料としてはほとんど使い物にならない という点です。
AHAは教材設計上、講習中に参照する教材としてもプロバイダーマニュアルを位置づけています。安くはない本をわざわざ買ってもらうわけですから、インストラクターとしては、講習中は極力テキストを使うようにしています
「◯◯ページの◯◯行目をご覧ください」
講習中は何度もテキストを見てもらうようにしています。
こんなとき、電子書籍だとページめくりに時間がかかるため、書籍版と電子版が混在したときに、電子書籍の人は間違いなく遅れをとる、というか目的ページにたどり着けないことがほとんど。
というのは、電子版と書籍版ではページ数や行数が異なっている場合があるからです。
講習を運営する側としては、はっきり言って大迷惑。
講習で大事なテンポ感は完全に損なわれますし、無駄な時間…
結局、インストラクターのテキストを開いて見せてあげる形で進んでいき、最終的には電子書籍の受講者は講習中にタブレットを見るのを放棄するのが常。
もう一度言います。
講習中に参照する資料としては電子書籍は使い物になりません。
講習中はDVDを流すだけで、テキストなんか開かないよというレベルのインストラクションであればどうでもいいところなのかもしれませんが、インストラクショナル・デザインに立脚した教材設計を考えたら、インストラクターとしてはここは譲れない部分です。
紙媒体の本を買えば、それはある意味一生モノです。
しかし電子書籍の場合、プラットフォームが変わったり廃れたりすれば読めなくなります。
ガイドライン自体は5年毎に変わっていますので、永続的な価値はないから関係ないと言えるかもしれませんが、歴史という点では大いに意義があると思っています。現にいまでもG2000版のBLSプロバイダーマニュアルは、蘇生法の指導員であれば永久保存版とも言うべき第一級の資料です。
これは紙媒体であるからいまでも古本として手に入るわけで、今後、AHAが電子書籍onlyとしてしまったら、歴史が失われると言っても過言ではないと思っています。
現時点、最新のG2020版のBLSプロバイダーマニュアルは電子書籍版のみ販売されています。
このあと書籍版も発売されるようですが、その時期は明らかにされていません。
いま、無理して電子書籍を買うのではなく、書籍版の出版を待ってもいいんじゃないかなと思います。
以上、インストラクター側の視点として書かせていただきました。
posted by めっつぇんばーむ at 15:27
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| AHA-BLSインストラクター
2020年08月21日
間違いだらけの AHAインストラクター Youtuber 動画
2007年から始めたこのブログ。
当時は、「AHAインストラクターであると名乗ってはいけない」、という 謎のローカルルール が信じられていたので、このブログも【勘違い】からずいぶん叩かれたものでした。
ときを経て2020年、AHAインストラクターとして情報発信する個人が増えてきましたね。ブログや SNS だけじゃなく、動画での情報発信も増えてきて、驚くばかりです。
そんな中、 やや看過できない問題アリの Youtube 動画を見つけてしまいました。
看護師で日本ACLS協会AHA-ITC BLS/ACLS/PEARSインストラクター という方が、一般市民向けにシリーズで救命法を解説しているのですが、その中身は【市民向けと医療者向けがごちゃまぜ】、【米国の受け売りで日本の事情にあっていない】、など、日本の一般視聴者をかなり誤解させそうな内容なんです。
動画作成者さんにはSNS上で一度ご指摘させていただいたのですが、すぐにブロックされてしまい、その後、修正される様子もないので、こちらで公開情報として、動画中の不適切な箇所とその理由を解説することにしました。
一般視聴者の誤解を最小限にしたい、日本における正しい情報を伝えたいというのが目的です。個人攻撃の意図はまったくありません。
本コンテンツに誤認や不適切な点があれば、ご指摘をいただければと思います。修正や対応をさせていただきます。また当該動画が撤回ないしは修正された場合は、こちらのブログ記事も非表示にするなどの対応をいたします。
(その後、動画は限定公開に切り替えられたようですが、伝え聞くところによると、「アンチに攻撃された」という受け止めで、内容の間違いについては自覚いただけていないようなので、このブログ記事は削除せずにいます。)
医療者ではなく一般の方向けということで紹介されているこちらの動画。アップされたのはごく最近の 2020/07/14 です。
問題は、3分15秒付近からの「呼吸・脈の確認」のところ。
一般の方向け(市民救助者という意味でしょう)としながらも、脈の確認を含めているのです。
市民救助者は、「反応なし+10秒以内に普段どおりの呼吸だと確信できない」ことを持って、胸骨圧迫を開始します。
これはアメリカの蘇生ガイドラインでもほぼ同じで、医療者と違って市民は、「反応なし+呼吸なし or 死戦期呼吸」の場合としています。(ハートセイバー受講者マニュアル 等を参照ください)
日本の場合は、埼玉で起きた学校事故の教訓から ASUKAモデル が提唱され、10秒間呼吸を見てもよくわからなければナシと判断するようにとの指導がされている点、米国より一歩進んだ形になっています。
この動画の中では、呼吸と脈の確認は医療従事者でも難しいから、自信がなければしなくてもOKとしています。結果的には脈の確認はしなくてよいと言っているとも解釈できますが、であれば最初から脈拍というそもそも言及するべきではないと思いますし、ご本人もわかりやすく伝えたいと言っているのであれば、余計なことは伝えないほうがシンプルですよね。
また「5-10秒よりすごく時間がかかってしまうくらいなら【脈と呼吸】は確認しないほうがマシ」という発言もあります。ここは間違いと断定するほどのところではありませんが、一応、市民向けにも講習を受ける立場の人には【呼吸確認】は基礎として間違いなく教えている部分である点は指摘しておきたいと思います。
日本では2010年の蘇生ガイドライン改定で 就学年齢未満(つまり小学生未満) に変更されました。
アメリカの蘇生ガイドライン準拠の BLS/ACLS/PEARS/PALS プロバイダーマニュアルやコースDVDでは、8歳未満と言っていますが、これはあくまでもアメリカでの話。
日本国内で、ましてや一般の方向けの解説動画としては、明らかな間違い と言わざるを得ません。
AHAテキストの中でも、医療従事者以外の市民を受講対象としたハートセイバーCPR AEDコースのテキストでは、「日本では小学生未満」と正しく注釈が入っていますし、DVDのテロップでもそう表示されます。
日本のAHA講習の中でも、自分で責任が取れる医療者向けはざっくりと米国のままの部分でも、教わったことを鵜呑みにしてしまう市民向けではちゃんと留意されているんですね。
8歳未満でも小学生未満でも大差ないじゃんと思われるかも知れませんが、本来は医者しかできない除細動という高度で侵襲的な医療処置を行うわけです。
ましてやAEDは法律に基づいた高度管理医療機器。その使用の法的要件を満たすためにも、日本の国内法規、規準、医療機器添付文書の通り正確に教えなければいけない部分です。
AEDパッドは1枚1万円以上して、1回限りの消耗品です。もしくは2年間の使用期限が切れたら廃棄しなければいけないもの。めったに使うわけではないものに余分に1万円以上のお金を出すかどうか、設置者次第です。
一般向けに話をするならば、むしろ「予備パッドは入ってない」という前提で話をしていかないと危険です。
胸毛が濃かったら… というやつですね。
日本の救命講習は、基本的に「救急蘇生法の指針」(市民用は 厚労省 ならびに 総務省消防庁 のWEBからPDFでダウンロード可)に基づいて実施されています。
その救急蘇生法の指針2015【市民用・解説編】の63ページのFAQで解説されていますが、AEDを使うという稀なケースの中でもさらに稀なケースということで、質問があった場合のみに説明する、という方針が示されています。
大事な点を強調したい、シンプルに伝えたいということであれば、真っ先に省く部分と言えます。
確かにこれは日本でも米国でもガイドライン2015で新しく出てきたポイントですが、ふつうに考えて、5cm以上6cm未満というわずか1cmの誤差範囲で押すのは無理です。
論文に基づいてこのような勧告が出ましたが、実現不能だし、なにより6cmを超えると損傷のリスクが増すと言われたら、どうしても浅くなるのが人間心理。特に一般市民の場合は。
そこで、実務的な指導の中では「少なくとも5cm」としています。
特にAHA講習では、医療者向けのBLSプロバイダーコースの中でも、基本的には「少なくとも5cm」という表現で指導・練習しており、胸骨圧迫の深さを測定できるフィードバック装置を使った場合にのみ6cmを超えないという目標が追加されます。(BLSプロバイダーマニュアルG2015 の p.3 をご覧ください)
医療者ですら条件付きでないと教えない内容です。少なくとも一般市民向けに教えるべきものではありません。
当時は、「AHAインストラクターであると名乗ってはいけない」、という 謎のローカルルール が信じられていたので、このブログも【勘違い】からずいぶん叩かれたものでした。
ときを経て2020年、AHAインストラクターとして情報発信する個人が増えてきましたね。ブログや SNS だけじゃなく、動画での情報発信も増えてきて、驚くばかりです。
そんな中、 やや看過できない問題アリの Youtube 動画を見つけてしまいました。
看護師で日本ACLS協会AHA-ITC BLS/ACLS/PEARSインストラクター という方が、一般市民向けにシリーズで救命法を解説しているのですが、その中身は【市民向けと医療者向けがごちゃまぜ】、【米国の受け売りで日本の事情にあっていない】、など、日本の一般視聴者をかなり誤解させそうな内容なんです。
動画作成者さんにはSNS上で一度ご指摘させていただいたのですが、すぐにブロックされてしまい、その後、修正される様子もないので、こちらで公開情報として、動画中の不適切な箇所とその理由を解説することにしました。
一般視聴者の誤解を最小限にしたい、日本における正しい情報を伝えたいというのが目的です。個人攻撃の意図はまったくありません。
本コンテンツに誤認や不適切な点があれば、ご指摘をいただければと思います。修正や対応をさせていただきます。また当該動画が撤回ないしは修正された場合は、こちらのブログ記事も非表示にするなどの対応をいたします。
(その後、動画は限定公開に切り替えられたようですが、伝え聞くところによると、「アンチに攻撃された」という受け止めで、内容の間違いについては自覚いただけていないようなので、このブログ記事は削除せずにいます。)
動画1 【一般向け】急変対応基礎編
医療者ではなく一般の方向けということで紹介されているこちらの動画。アップされたのはごく最近の 2020/07/14 です。
問題は、3分15秒付近からの「呼吸・脈の確認」のところ。
一般の方向け(市民救助者という意味でしょう)としながらも、脈の確認を含めているのです。
■ 市民は脈の確認はしない
市民救助者には頸動脈の脈拍の触知は推奨されていません。市民にも脈を取ることを教えていたのは20年以上前の昔の話。市民救助者は、「反応なし+10秒以内に普段どおりの呼吸だと確信できない」ことを持って、胸骨圧迫を開始します。
これはアメリカの蘇生ガイドラインでもほぼ同じで、医療者と違って市民は、「反応なし+呼吸なし or 死戦期呼吸」の場合としています。(ハートセイバー受講者マニュアル 等を参照ください)
日本の場合は、埼玉で起きた学校事故の教訓から ASUKAモデル が提唱され、10秒間呼吸を見てもよくわからなければナシと判断するようにとの指導がされている点、米国より一歩進んだ形になっています。
この動画の中では、呼吸と脈の確認は医療従事者でも難しいから、自信がなければしなくてもOKとしています。結果的には脈の確認はしなくてよいと言っているとも解釈できますが、であれば最初から脈拍というそもそも言及するべきではないと思いますし、ご本人もわかりやすく伝えたいと言っているのであれば、余計なことは伝えないほうがシンプルですよね。
また「5-10秒よりすごく時間がかかってしまうくらいなら【脈と呼吸】は確認しないほうがマシ」という発言もあります。ここは間違いと断定するほどのところではありませんが、一応、市民向けにも講習を受ける立場の人には【呼吸確認】は基礎として間違いなく教えている部分である点は指摘しておきたいと思います。
動画2 【AEDシリーズ2】〜パッドの貼り方について〜
■ 小児パッドは小学生未満 8歳未満じゃない
この方の他の動画でも一貫して間違っているのですが、AEDの小児パッドの適応は日本では8歳未満ではありません。日本では2010年の蘇生ガイドライン改定で 就学年齢未満(つまり小学生未満) に変更されました。
アメリカの蘇生ガイドライン準拠の BLS/ACLS/PEARS/PALS プロバイダーマニュアルやコースDVDでは、8歳未満と言っていますが、これはあくまでもアメリカでの話。
日本国内で、ましてや一般の方向けの解説動画としては、明らかな間違い と言わざるを得ません。
AHAテキストの中でも、医療従事者以外の市民を受講対象としたハートセイバーCPR AEDコースのテキストでは、「日本では小学生未満」と正しく注釈が入っていますし、DVDのテロップでもそう表示されます。
日本のAHA講習の中でも、自分で責任が取れる医療者向けはざっくりと米国のままの部分でも、教わったことを鵜呑みにしてしまう市民向けではちゃんと留意されているんですね。
8歳未満でも小学生未満でも大差ないじゃんと思われるかも知れませんが、本来は医者しかできない除細動という高度で侵襲的な医療処置を行うわけです。
ましてやAEDは法律に基づいた高度管理医療機器。その使用の法的要件を満たすためにも、日本の国内法規、規準、医療機器添付文書の通り正確に教えなければいけない部分です。
■ 2枚目のパッドが入っているとは限らない
動画の4分30秒あたりで、「2枚目のパッドが必ず入っています」と断じていますが、そんなことはありません。予備パッドは入っていないことの方が多いのが現状です。AEDパッドは1枚1万円以上して、1回限りの消耗品です。もしくは2年間の使用期限が切れたら廃棄しなければいけないもの。めったに使うわけではないものに余分に1万円以上のお金を出すかどうか、設置者次第です。
一般向けに話をするならば、むしろ「予備パッドは入ってない」という前提で話をしていかないと危険です。
■ 胸毛・水濡れ・ペースメーカー・薬剤パッチ 今は教えない
これは間違い、ということではありませんが、日米の教育で少し違う部分です。日本では2015年からAED使用上の特殊なケースの説明はしないことになりました。胸毛が濃かったら… というやつですね。
日本の救命講習は、基本的に「救急蘇生法の指針」(市民用は 厚労省 ならびに 総務省消防庁 のWEBからPDFでダウンロード可)に基づいて実施されています。
その救急蘇生法の指針2015【市民用・解説編】の63ページのFAQで解説されていますが、AEDを使うという稀なケースの中でもさらに稀なケースということで、質問があった場合のみに説明する、という方針が示されています。
大事な点を強調したい、シンプルに伝えたいということであれば、真っ先に省く部分と言えます。
動画3 成人用マネキンを用いて【胸骨圧迫】のポイントを実演!
■ 成人への胸骨圧迫の深さは「5cm以上6cmを超えない」ではない
これは動画の1分30秒あたりですが、日本でもアメリカでも、市民向けに「6cmを超えない」ということを指導することはありません。確かにこれは日本でも米国でもガイドライン2015で新しく出てきたポイントですが、ふつうに考えて、5cm以上6cm未満というわずか1cmの誤差範囲で押すのは無理です。
論文に基づいてこのような勧告が出ましたが、実現不能だし、なにより6cmを超えると損傷のリスクが増すと言われたら、どうしても浅くなるのが人間心理。特に一般市民の場合は。
そこで、実務的な指導の中では「少なくとも5cm」としています。
特にAHA講習では、医療者向けのBLSプロバイダーコースの中でも、基本的には「少なくとも5cm」という表現で指導・練習しており、胸骨圧迫の深さを測定できるフィードバック装置を使った場合にのみ6cmを超えないという目標が追加されます。(BLSプロバイダーマニュアルG2015 の p.3 をご覧ください)
医療者ですら条件付きでないと教えない内容です。少なくとも一般市民向けに教えるべきものではありません。
posted by めっつぇんばーむ at 12:26
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| AHA-BLSインストラクター
2020年08月12日
AEDの小児パッドは、「8歳未満」じゃないですよ?
心肺蘇生法、救命処置をしっかり学ぼうと思ったら、アメリカ心臓協会の BLSプロバイダーコース が最高峰なのは間違いないと思います。
ただ注意しなくてはいけないのは、AHA-BLSコースは、アメリカの蘇生ガイドラインに基づいて作られているという点。
ここは日本です。そもそも蘇生ガイドライン自体が米国とは違うんだという認識が必要です。
日米のガイドラインの違いなんて、受講者が知るよしもありませんから、このガイドラインの違いに注意してコース展開するのはインストラクターの役割であり、責任です。

例えば、AEDの小児用パッドの適応は?
という点で、
8歳未満
と教えているAHAインストラクターが、2020年の今になっても存在している模様。(つい最近も AHA-BLSインストラクター と称する Youtuber が、動画の中で堂々と間違ったことを教えていました)
アメリカの教材の直訳である BLSプロバイダーコース DVD をただ流すだけの講習だと、受講者はふつうにそれが刷り込まれちゃいますよね。
テキストを見ても、成人用パッドは8歳以上、小児用パッドは8歳未満とはっきりと書かれていますし。(本当は翻訳と日本語版制作の責任も問いたいところですが、それはまた別の項で)
しかし、ここは日本! JRC蘇生ガイドラインではG2010以降、日本では8歳未満ではなく、就学年齢未満に小児パッドを使う ように変更されています。
2004年〜2009年までは、日本でも8歳未満で良かったのですが、5年間やってみたら、小学校が困っちゃったんです。
小学校2年生までは小児パッドを使って、3年生以上は成人パット。小児パットという割にはややこしいじゃん! って話。
そこでガイドライン2010の改定のときに、日本では小学校に上がったら成人パッドでいいよ、とガイドラインが改定されたのです。(米国は変わらず)
ここは日本です。しかもAEDは高度管理医療機器であり、除細動はまぎれもない医行為。それを医師以外が実施する以上、法律に基づいた使い方をしないと医師法違反阻却要件から外れます。
AHA講習であっても、日本国内で教える以上、正しく伝えなければいけない部分です。これは指導員としての倫理と責任です。
日本で8歳から就学年齢に変わってから、すでに10年近く経とうとしています。
未だに8歳未満という教え方をしているインストラクターは、このことを知らないのでしょうか?
昔は、AHA講習はAHAガイドラインの範囲外のことを喋っちゃいけないみたいなルールがあったという話も聞きます。
しかし、少なくともG2015の教材改定で、地元でのローカルルールを優先するという方向性が明確に示されましたし、インストラクターはローカル・プロトコルにも習熟している必要がある点が、BLSインストラクターマニュアルにも書かれています。
このガイドラインの変化についてこれていない「昔取った杵柄」インストラクター、なのでしょうか?
法律行為を教えるにも関わらず、日本の法律をはっきり伝えないというのは、受講者に対して不誠実な背任行為ともとも言えます。
だって、その教えによって、人の生死が変わるかもしれないし、間違ったことを教わった受講者が訴追されることもあるですから。
救命法の指導員は、責任のあるプロとしての仕事だと思っています。無責任なボランティアでやるようなものじゃない!
BLSプロバイダーコースを受講した皆さん、AED使用の日米の違いについて、インストラクターはちゃんと説明してくれましたか?
関連記事:
・救命法指導員は、その重い責任を自覚すべし−「AED充電中の胸骨圧迫」編
・救命法指導員は、その重い責任を自覚すべし−「人工呼吸の省略」編
ただ注意しなくてはいけないのは、AHA-BLSコースは、アメリカの蘇生ガイドラインに基づいて作られているという点。
ここは日本です。そもそも蘇生ガイドライン自体が米国とは違うんだという認識が必要です。
ぶっちゃけで言えば、日本国内で異国の救命講習が大手をふるって開催されているということ自体がおかしいわけです。日本には日本蘇生協議会JRC蘇生ガイドラインという立派なものがあるのに、それに準拠した日本版BLS講習(プロ向け)が組織化されていないのは、国策としてはどうなんでしょう?
日米のガイドラインの違いなんて、受講者が知るよしもありませんから、このガイドラインの違いに注意してコース展開するのはインストラクターの役割であり、責任です。
■ 小児パッドの適応は日米で違う!

例えば、AEDの小児用パッドの適応は?
という点で、
8歳未満
と教えているAHAインストラクターが、2020年の今になっても存在している模様。(つい最近も AHA-BLSインストラクター と称する Youtuber が、動画の中で堂々と間違ったことを教えていました)
アメリカの教材の直訳である BLSプロバイダーコース DVD をただ流すだけの講習だと、受講者はふつうにそれが刷り込まれちゃいますよね。
テキストを見ても、成人用パッドは8歳以上、小児用パッドは8歳未満とはっきりと書かれていますし。(本当は翻訳と日本語版制作の責任も問いたいところですが、それはまた別の項で)
しかし、ここは日本! JRC蘇生ガイドラインではG2010以降、日本では8歳未満ではなく、就学年齢未満に小児パッドを使う ように変更されています。
2004年〜2009年までは、日本でも8歳未満で良かったのですが、5年間やってみたら、小学校が困っちゃったんです。
小学校2年生までは小児パッドを使って、3年生以上は成人パット。小児パットという割にはややこしいじゃん! って話。
そこでガイドライン2010の改定のときに、日本では小学校に上がったら成人パッドでいいよ、とガイドラインが改定されたのです。(米国は変わらず)
■ インストラクターの責任と倫理
ここは日本です。しかもAEDは高度管理医療機器であり、除細動はまぎれもない医行為。それを医師以外が実施する以上、法律に基づいた使い方をしないと医師法違反阻却要件から外れます。
AHA講習であっても、日本国内で教える以上、正しく伝えなければいけない部分です。これは指導員としての倫理と責任です。
日本で8歳から就学年齢に変わってから、すでに10年近く経とうとしています。
未だに8歳未満という教え方をしているインストラクターは、このことを知らないのでしょうか?
昔は、AHA講習はAHAガイドラインの範囲外のことを喋っちゃいけないみたいなルールがあったという話も聞きます。
しかし、少なくともG2015の教材改定で、地元でのローカルルールを優先するという方向性が明確に示されましたし、インストラクターはローカル・プロトコルにも習熟している必要がある点が、BLSインストラクターマニュアルにも書かれています。
このガイドラインの変化についてこれていない「昔取った杵柄」インストラクター、なのでしょうか?
法律行為を教えるにも関わらず、日本の法律をはっきり伝えないというのは、受講者に対して不誠実な背任行為ともとも言えます。
だって、その教えによって、人の生死が変わるかもしれないし、間違ったことを教わった受講者が訴追されることもあるですから。
救命法の指導員は、責任のあるプロとしての仕事だと思っています。無責任なボランティアでやるようなものじゃない!
BLSプロバイダーコースを受講した皆さん、AED使用の日米の違いについて、インストラクターはちゃんと説明してくれましたか?
関連記事:
・救命法指導員は、その重い責任を自覚すべし−「AED充電中の胸骨圧迫」編
・救命法指導員は、その重い責任を自覚すべし−「人工呼吸の省略」編
posted by めっつぇんばーむ at 15:29
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| AHA-BLSインストラクター
2019年12月14日
学校安全としての救命講習をどうにかしなくちゃいけない

日本体育大学で開催された公開講座「学校・部活動における重大事件・事故から学ぶ研修会」に参加してきました。
3回シリーズの今回は、学校の事故でお子さんを亡くした遺族の方の講演。
これから体育教員やスポーツ指導の場に立つであろう日体大の学生のほか、一般参加者、マスコミなどを前に、3名のご遺族が事故の概要と学校側の対応、学校安全の在り方・課題をお話しくださいました。
・子どもを突然亡くすということ
・学校側の危機意識の低さと対応策などの準備不足
・事故対応の場当たり感
・事故後の説明内容、態度の問題
・情報不開示(隠蔽)
・監督省庁が強制力を持っていない現状
語ってくれた遺族の方たちは、話をすることで、また話の準備をする中で、思い出したくない現実と向き合い、身を切る思いでステージに立ってくれていたのだと思います。
涙なしには聞けない訴え、会場にいた人で、心を動かされなかった人は誰もいなかったはず。
日本体育大学という、これからスポーツ指導者や学校の保健体育の教員になる人が多い場での、この企画、大いに意味があったと思います。
マスコミ報道では伝えきれない未編集の生の声を聞かせてくれました。
学校教職員に求められる救命対応訓練
こうした話を聞いて痛切に感じるのは、学校側の準備の甘さです。自覚が足りないと言ったら、それまでですが、なんでそこまで他人事風でいられるのだろうと不思議でなりません。
これだけ事故が起きていて、報道されていて、事故検証報告書が出されているこの時代、なぜ?
学校の先生達はおっしゃいます。「私たちはちゃんと訓練を受けているので大丈夫です」と。
しかし、事故が起きて検証委員会の報告で「市民レベルの知識・技能すらなかった」と書かれてしまうことがあまりに多い現状。
もちろん緊急事態ですから、訓練と同じようにスムーズにできるはずがないというのはごもっとも。
しかし、慌てるのはわかっているわけですから、
・パニックになることを前提としたトレーニングをしていますか?
・準備体制・システムを構築していますか?
ということなんですよね。
パニックを想定したトレーニングをしているか?
医療従事者でもなんでもない教員個人の能力やパフォーマンスに限界があるのは当然のこと。しかし、子どもの命を守るためには最低限やらなくちゃいけないことがある。
それを個人でカバーできないのであれば、システムでカバーする。それが学校における救急対応です。
一般市民と同じ立場でマネキン相手に決まりきった動作を繰り返させる救命講習を受ければ対策が十分だと思っているのだとしたら、おめでたいとしか言えません。
このあたりは、学校教職員はちゃんとわかっているはずです。
学校事故も検証報告を見れば、市民レベルの救急対応訓練では不十分で、教職員連携を含めたシミュレーション訓練を行うべきだという点は、今はほぼ必ず書かれていることだからです。
実際の動きや職員連携、さらには慌ててしまうと思うようなパフォーマンスが発揮できないことなどを体感・実感できるのがシミュレーションです。
こうして意思決定や問題解決能力を鍛えるいわゆるノン・テクニカルスキルのトレーニングをしない限りは、現場で動けることを期待するのは難しいでしょう。
通報ひとつにしても、「あなた119番!」の一言で終わらせちゃダメですよね。
例えば、体育館で教員一人、児童30人という状況下で、どうやって救急要請したらいいか?
ここで傷病者をろくすっぽ評価せずに、通報のためにその場を離れた教員が、救命処置の開始遅れを指摘されて訴追されているケースもあります。(この対応の是非はここでは触れません)
問題は、救命訓練を消防等に丸投げしているところだと私は考えています。
依頼された側は、普通救命講習 I、II、III のような規定講習をこなせばいいと考えがちですが、現場対応としてはそれでは不十分であるということをどれだけ理解しているか?
このことがわかるのは、学校現場にいて各種事故報告書の提言を知っている教職員です。ですから学校側から、ただの規定講習だけではなく、現場に即した内容のアレンジを依頼・相談していく必要があるのではないでしょうか?
つまり、学校教職員向けの救命講習は、規程の汎用プログラムでは足りない、ということです。
定形コース受講ではノン・テクニカルスキルは鍛えられない
これは学校教職員向けに作られているとも言われているアメリカ心臓協会のハートセイバーCPR AEDコースにしても同じです。
衛生管理や練習量という点では、日本の一般的な救命講習よりはしっかりした内容と言えるかもしれませんが、現場での実践対応まではプログラム化されていないのは変わりません。
もし、2段階に分けるなら、汎用講習+現場シミュレーション。
このふたつが必要です。
もしくは、このふたつをシームレスにつなげた研修を企画すること。
救命講習は、学校における避難訓練と同じです。学校の構造やシステムを知らない第三者に避難訓練を依頼するとしたら、おかしいですよね?
同じように学校における救命講習も本来は学校教職員が自ら企画していくべきものです。
どうしても医学的な判断や機材借用があるため、外部機関を頼ることになると思いますが、それを丸投げするのはおかしい。
そんな考え方にシフトしていかなくてはいけません。
同時に、救命講習を相談・依頼される側としては、規程コースをこなすだけではいけないというプロとしての自覚を持っていただきたい。
この考えは以前からかわりませんが、今回、学校事故でお子さんを亡くしたご遺族の悲痛な声を聞くにつけ、新たにこの思いを強くしました。
関連過去記事:
子どもが倒れた! 学校の先生は傍観者でいいんですか?
http://aha-bls-instructor.seesaa.net/article/teacher-CPR.html
posted by めっつぇんばーむ at 15:43
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| ハートセイバー(対応義務のある市民向け講習)
2019年10月14日
eCard 印刷加工のコツ その1 印刷サイズ
AHAプロバイダーコースの修了証の eCard 化、進んできましたね。
・福井県済生会病院ITC
・日本循環器学会ITC
・日本医療教授システム学会ITC
で、おおむね eCard 移行が完了した模様。
ご存知ない方のためにご説明すると、、、
AHAのプロバイダーカードが従来の紙媒体から電子媒体に変わったんです。

メールの案内に従って、CPRVerify という資格確認ページにログインすると、インターネット上に資格証が表示されるという仕組みです。
ネット上の資格証明ページからは、資格証をPDFファイルとしてダウンロードすることができます。
2ページ構成になっていて、1ページ目を印刷すると上記のような賞状タイプの証明書を作れます。
2ページ目を印刷すると、切り抜いて加工することで旧来のような体裁のプロバイダーカードを自分で作ることができます。
つまり、印刷物としてのプロバイダーカードが必要な人は自分で印刷して作ってね、という形に変わったのです。
自宅とか職場でカラーレーザープリンターが使えればいいのですが、カラーとなると難しい人が多いかもしれません。
そこでPDFファイルをUSBメモリーに入れて、コンビニの複合機で印刷するという方法がおすすめ。
ただこの場合、注意しなければいけないのが、用紙サイズ。
AHAのwebシステムから吐き出されるPDFファイルは、A4サイズではなくアメリカ規格のレターサイズになっているため、そのまま印刷しようとすると、「ちょっと小さめにする」モードが自動設定されてしまい、印刷するカードがひとまわり小さくなってしまうのです。
小さくても気にしなければなにも問題はありません。
ただ、PEARSやPALSのカードは、AHAのロゴ以外に米国小児科学会(AAP)のロゴも入っているのですが、ロゴ内の文字が小さいので、サイズが小さいとかすれてしまうんですよね。
これを原寸で印刷しようと思うと、けっこうやっかい。
あまり汎用性がなくて恐縮ですが、私のやり方、ということで紹介します。
概略としては、次のようなステップです。
1.PDFファイルを「PDFに書き出す」ことでプロテクトを解除する
2.PDF編集ソフトで1ページ目を削除
3.PDF編集ソフトで用紙サイズをA3サイズに変更
4.PDF編集ソフトでトリミングし、用紙サイズをA4サイズに調整する(上下は61.58mm、左右は43.52mmをカット)
これにより、コンビニの複合機に持ち込んだ場合でもA4サイズと認識されて、余計なサイズ縮小がされずに済みます。
私の場合は、手順1はMac OSのプレビューの「書き出し」機能を使って、PDFのサイズ変更はAdobeのAcrobat Proを使用。
PDF編集ソフトも今はフリーソフトがいろいろあるようです。ページ削除機能、用紙サイズの変更機能、トリミング機能がついていれば同じようにいけると思います。
PDFのプロテクト解除は、Windowsでも印刷機能からXPSファイルに書き出せば、中身はPDFファイルです。
もっと簡単な方法もあるようにも思いますが、とりあえず、私は上記の方法でどうにかやってます。
参考まで。
・福井県済生会病院ITC
・日本循環器学会ITC
・日本医療教授システム学会ITC
で、おおむね eCard 移行が完了した模様。
ご存知ない方のためにご説明すると、、、
AHAのプロバイダーカードが従来の紙媒体から電子媒体に変わったんです。

AHA-eCardとは
BLSとかACLSプロバイダーコースに合格すると、後日コース主催者からメールが届きます。メールの案内に従って、CPRVerify という資格確認ページにログインすると、インターネット上に資格証が表示されるという仕組みです。
ネット上の資格証明ページからは、資格証をPDFファイルとしてダウンロードすることができます。
2ページ構成になっていて、1ページ目を印刷すると上記のような賞状タイプの証明書を作れます。
2ページ目を印刷すると、切り抜いて加工することで旧来のような体裁のプロバイダーカードを自分で作ることができます。
つまり、印刷物としてのプロバイダーカードが必要な人は自分で印刷して作ってね、という形に変わったのです。
自分でプロバイダーカードを作るコツ
PDFファイルをカラー印刷する場合、カラーレーザープリンタでないと、見た目的にちょっと厳しいです。自宅とか職場でカラーレーザープリンターが使えればいいのですが、カラーとなると難しい人が多いかもしれません。
そこでPDFファイルをUSBメモリーに入れて、コンビニの複合機で印刷するという方法がおすすめ。
ただこの場合、注意しなければいけないのが、用紙サイズ。
AHAのwebシステムから吐き出されるPDFファイルは、A4サイズではなくアメリカ規格のレターサイズになっているため、そのまま印刷しようとすると、「ちょっと小さめにする」モードが自動設定されてしまい、印刷するカードがひとまわり小さくなってしまうのです。
小さくても気にしなければなにも問題はありません。
ただ、PEARSやPALSのカードは、AHAのロゴ以外に米国小児科学会(AAP)のロゴも入っているのですが、ロゴ内の文字が小さいので、サイズが小さいとかすれてしまうんですよね。
これを原寸で印刷しようと思うと、けっこうやっかい。
あまり汎用性がなくて恐縮ですが、私のやり方、ということで紹介します。
概略としては、次のようなステップです。
1.PDFファイルを「PDFに書き出す」ことでプロテクトを解除する
2.PDF編集ソフトで1ページ目を削除
3.PDF編集ソフトで用紙サイズをA3サイズに変更
4.PDF編集ソフトでトリミングし、用紙サイズをA4サイズに調整する(上下は61.58mm、左右は43.52mmをカット)
これにより、コンビニの複合機に持ち込んだ場合でもA4サイズと認識されて、余計なサイズ縮小がされずに済みます。
私の場合は、手順1はMac OSのプレビューの「書き出し」機能を使って、PDFのサイズ変更はAdobeのAcrobat Proを使用。
PDF編集ソフトも今はフリーソフトがいろいろあるようです。ページ削除機能、用紙サイズの変更機能、トリミング機能がついていれば同じようにいけると思います。
PDFのプロテクト解除は、Windowsでも印刷機能からXPSファイルに書き出せば、中身はPDFファイルです。
もっと簡単な方法もあるようにも思いますが、とりあえず、私は上記の方法でどうにかやってます。
参考まで。
posted by めっつぇんばーむ at 14:40
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| AHA-BLSインストラクター
2019年10月02日
子どもが倒れた! 学校の先生は傍観者でいいんですか?
私は、米国文化で指導を学んだBLSインストラクターです。10数年前からずっと言い続けていました。
救命処置は、
・一般市民
・救護責務がある市民
・医療者
を分けて考えるべきだと。
アメリカでは、その階層分けが昔からふつうでした。
日本だと、市民と医療者の2分しかしないから、いろいろおかしな話になっているというのは10年以上前から感じ、訴えてきたところです。
当時は、AHAインストラクターは身分を明かしてはいけない、みたいな変な時代でしたし、インターネットでの情報発信もHTMLが必要だったりしたせいで、ネットの世界でも、学校の先生は一般市民じゃないよね? みたいな論調は稀有でした。
それが今ではSNSのおかげで、あたりまえのことをあたりまえに発信する人が増えてきてうれしい限りです。
しかし、昔もそうでしたし、今でもいるんです。
学校の先生は救命処置を「ちゃんとできる」ようなトレーニングが必要で、一般市民向け研修でお茶を濁すようじゃダメだよ、と言うと、血相をかかえて猛反対してくる人が。
今までも、業界では有名な「意識の高いイキリ救命士」からはさんざん叩かれましたし、訴訟をちらつかせるなんて脅迫商法だと言われたり、ただでさえ酷使されている教員をどこまで追い詰めるんだとお叱りを受けたり。
ただ不思議なことに、当の学校教職員からクレームを受けたことは一度もないんですよね。
1.学校教職員は管理下で事故が起これば対応する責任がある
2.注意義務の下、一定水準の行動が期待されている
3.見て見ぬ振りはできない → 逃げられない
4.実際に訴訟もいっぱい起きてるじゃん
5.だったら、本気でちゃんと練習しようよ
ということを言っているだけなんですけど、なんだか知らないけど、過剰に猛反対されるんです。
なんなんでしょうね? まったくもって意味がわかりません。なにかおかしなこと、言ってます??
学校の先生もただの一般市民ですよ。素人レベルのことができれば大丈夫ですからね〜
って喧伝することになんのメリットがあるんですか?
そんな言葉に騙された教職員がバリバリに訴えられる現実、どうしてくれるんでしょう?
それに命を落としたお子さんはどうなるの? その家族は?
道端で倒れた子ども、その場にいた大人が見て見ぬ振りして通り過ぎた人がいても誰も責任は追求しません。だって無関係なんですから。
でも学校で起きた心肺停止事案は違うでしょ?
学校の先生は忙しいんです。普段の業務に加えて時間をかけて救命処置訓練をしろなんて無理ですよ、みたいなことを言ってくる人はいますが、忙しいのは部活指導のせいですかね?
部活の指導と人命救助訓練。
比べるのもバカバカしい。
必ず救命できなきゃダメというのは無理ありすぎ! という声もよく届きますが、それこそ素人の幻想、戯言。
CPRをやれば助かるなんて思ってるのはド素人です。
現実社会では、奏功して助かるほうが圧倒的に少ないって知ってますか?
実際の裁判例をみればわかりますが、助かったかどうかじゃなくて、備えていたか、やるべきことをやったかが焦点。
だから、ちゃんと備えましょうと言っているわけです。
慌てるのは人間だから当然。想定し、準備し、最善を尽くしたか?
結果ではなく、日頃の準備と心構えを問題としているのです。
救命処置は、
・一般市民
・救護責務がある市民
・医療者
を分けて考えるべきだと。
アメリカでは、その階層分けが昔からふつうでした。
日本だと、市民と医療者の2分しかしないから、いろいろおかしな話になっているというのは10年以上前から感じ、訴えてきたところです。
当時は、AHAインストラクターは身分を明かしてはいけない、みたいな変な時代でしたし、インターネットでの情報発信もHTMLが必要だったりしたせいで、ネットの世界でも、学校の先生は一般市民じゃないよね? みたいな論調は稀有でした。
それが今ではSNSのおかげで、あたりまえのことをあたりまえに発信する人が増えてきてうれしい限りです。
しかし、昔もそうでしたし、今でもいるんです。
学校の先生は救命処置を「ちゃんとできる」ようなトレーニングが必要で、一般市民向け研修でお茶を濁すようじゃダメだよ、と言うと、血相をかかえて猛反対してくる人が。
今までも、業界では有名な「意識の高いイキリ救命士」からはさんざん叩かれましたし、訴訟をちらつかせるなんて脅迫商法だと言われたり、ただでさえ酷使されている教員をどこまで追い詰めるんだとお叱りを受けたり。
ただ不思議なことに、当の学校教職員からクレームを受けたことは一度もないんですよね。
1.学校教職員は管理下で事故が起これば対応する責任がある
2.注意義務の下、一定水準の行動が期待されている
3.見て見ぬ振りはできない → 逃げられない
4.実際に訴訟もいっぱい起きてるじゃん
5.だったら、本気でちゃんと練習しようよ
ということを言っているだけなんですけど、なんだか知らないけど、過剰に猛反対されるんです。
なんなんでしょうね? まったくもって意味がわかりません。なにかおかしなこと、言ってます??
学校の先生もただの一般市民ですよ。素人レベルのことができれば大丈夫ですからね〜
って喧伝することになんのメリットがあるんですか?
そんな言葉に騙された教職員がバリバリに訴えられる現実、どうしてくれるんでしょう?
それに命を落としたお子さんはどうなるの? その家族は?
道端で倒れた子ども、その場にいた大人が見て見ぬ振りして通り過ぎた人がいても誰も責任は追求しません。だって無関係なんですから。
でも学校で起きた心肺停止事案は違うでしょ?
学校の先生は忙しいんです。普段の業務に加えて時間をかけて救命処置訓練をしろなんて無理ですよ、みたいなことを言ってくる人はいますが、忙しいのは部活指導のせいですかね?
部活の指導と人命救助訓練。
比べるのもバカバカしい。
必ず救命できなきゃダメというのは無理ありすぎ! という声もよく届きますが、それこそ素人の幻想、戯言。
CPRをやれば助かるなんて思ってるのはド素人です。
現実社会では、奏功して助かるほうが圧倒的に少ないって知ってますか?
実際の裁判例をみればわかりますが、助かったかどうかじゃなくて、備えていたか、やるべきことをやったかが焦点。
だから、ちゃんと備えましょうと言っているわけです。
慌てるのは人間だから当然。想定し、準備し、最善を尽くしたか?
結果ではなく、日頃の準備と心構えを問題としているのです。
posted by めっつぇんばーむ at 18:17
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| AHA-BLSインストラクター
2019年09月16日
応急救護、責任を問われる人と問われない人
心肺蘇生法は、結果がどうであろうと責任は問われません。
という話をよく聞きます。
一般市民向けの救命講習の中で聞くのであれば、いいのですが、これをインターネットのSNSで発信すると少しおかしなことになります。
だって、現実問題、救護活動を巡っての裁判、よく起きてますよね?
賠償金いくらという民事裁判だけでなく、業務上過失致死疑いでの送検も珍しくありません。(送検というのは警察が刑事責任ありと判断して、裁判準備を進めるために検察に移管することです。裁判結果によってはいわゆる前科になるやつです。)
大分県別府署は5月7日、業務上過失致死の疑いで県立特別支援学校の元校長ら4人を書類送検した。同校の当時17歳の女子生徒が2016年9月15日に、給食を喉に詰まらせ死亡した事故をめぐり、女子生徒の両親が告訴していた。
送検されたのは当時の校長、担任教諭、養護教諭ら4人(うち1人はすでに退職)。容疑は担任教諭が見守り業務を怠ったほか、養護教諭らが適切な応急措置を取らず、校長がそれらの監督指導をせずに、女子生徒を窒息死させた疑い。女子生徒は担任教諭が席を立っていた間に床に倒れ、救急搬送されたが、翌10月2日に死亡した。調べに対し4人は容疑を認めているという。(教育新聞 2018年5月7日)

心肺蘇生や応急手当て、救護活動を巡って責任を問われないなんて、嘘じゃん! って思いません?
それでも、応急手当てのインストラクターさんたちは、今日も「訴えられません、大丈夫です。勇気を持って行動して!」と喧伝しています。
さて、この点を私たちはどう理解したらいいでしょうか?
話は簡単。
安全管理に注意義務がない人は責任を問われないのに対して、注意義務がある人は実施内容(実施しないことも含めて)に責任が発生するということです。
たまたまその場に居合わせた一般市民が善意で救護にあたった場合、その過誤については問われないことが刑法と民法で規定されています。
当たり前ですよね。
足を止めて、手を貸してくれただけでもありがとう! という世界です。
しかし、学校教職員や施設警備員、スポーツインストラクターのような、その場の安全管理に一定の責任ある立場の人が、しかるべき行動をしなかったら、業務上の注意義務違反を問われる可能性は高いと言えるでしょう。
また、実施した内容についても、通りすがりの立場の人よりは高い水準を求められるのも否めないでしょう。
備えている立場なのですから。
一般市民向け救命講習の中で、「責任は問われません。自信がなくてもいいから、勇気を持って一歩踏み出して!」ということはアリとしても、学校教職員向け講習で同じように言ってしまうのは問題。
むしろ「責任が問われる可能性は否定できません。ですから、自信が付くまでしっかり練習をしましょう」というべきでしょう。
応急手当指導員の皆さんは、この違いをきちんと認識しているでしょうか?
まだ、誰が見ているかわからないSNS上で、対象を限定せずに、心肺蘇生法は実施責任を問われない、と喧伝するのも、不幸な事故を招きかねないという点で、危ないなぁと思って、見ています。
いずれにしても、「救命できなければ」責任が問われるという言い方は適切ではないと思います。
基本的に助からないのが普通ですから。救命できることのほうが稀です。
助からないという結果ではなく、状況・立場の範囲内できちんと準備がされていたか、取るべき行動を取れていたかが焦点となります。
最善を尽くしました、と言えるかどうか。
備えがなければ、その時点ですでに誠実さに嫌疑がかかり、ほぼ負けが決まっています。
という話をよく聞きます。
一般市民向けの救命講習の中で聞くのであれば、いいのですが、これをインターネットのSNSで発信すると少しおかしなことになります。
だって、現実問題、救護活動を巡っての裁判、よく起きてますよね?
賠償金いくらという民事裁判だけでなく、業務上過失致死疑いでの送検も珍しくありません。(送検というのは警察が刑事責任ありと判断して、裁判準備を進めるために検察に移管することです。裁判結果によってはいわゆる前科になるやつです。)
大分の給食死亡事故 支援学校の元校長ら書類送検
大分県別府署は5月7日、業務上過失致死の疑いで県立特別支援学校の元校長ら4人を書類送検した。同校の当時17歳の女子生徒が2016年9月15日に、給食を喉に詰まらせ死亡した事故をめぐり、女子生徒の両親が告訴していた。
送検されたのは当時の校長、担任教諭、養護教諭ら4人(うち1人はすでに退職)。容疑は担任教諭が見守り業務を怠ったほか、養護教諭らが適切な応急措置を取らず、校長がそれらの監督指導をせずに、女子生徒を窒息死させた疑い。女子生徒は担任教諭が席を立っていた間に床に倒れ、救急搬送されたが、翌10月2日に死亡した。調べに対し4人は容疑を認めているという。(教育新聞 2018年5月7日)

心肺蘇生や応急手当て、救護活動を巡って責任を問われないなんて、嘘じゃん! って思いません?
それでも、応急手当てのインストラクターさんたちは、今日も「訴えられません、大丈夫です。勇気を持って行動して!」と喧伝しています。
さて、この点を私たちはどう理解したらいいでしょうか?
話は簡単。
安全管理に注意義務がない人は責任を問われないのに対して、注意義務がある人は実施内容(実施しないことも含めて)に責任が発生するということです。
たまたまその場に居合わせた一般市民が善意で救護にあたった場合、その過誤については問われないことが刑法と民法で規定されています。
当たり前ですよね。
足を止めて、手を貸してくれただけでもありがとう! という世界です。
しかし、学校教職員や施設警備員、スポーツインストラクターのような、その場の安全管理に一定の責任ある立場の人が、しかるべき行動をしなかったら、業務上の注意義務違反を問われる可能性は高いと言えるでしょう。
また、実施した内容についても、通りすがりの立場の人よりは高い水準を求められるのも否めないでしょう。
備えている立場なのですから。
一般市民向け救命講習の中で、「責任は問われません。自信がなくてもいいから、勇気を持って一歩踏み出して!」ということはアリとしても、学校教職員向け講習で同じように言ってしまうのは問題。
むしろ「責任が問われる可能性は否定できません。ですから、自信が付くまでしっかり練習をしましょう」というべきでしょう。
応急手当指導員の皆さんは、この違いをきちんと認識しているでしょうか?
まだ、誰が見ているかわからないSNS上で、対象を限定せずに、心肺蘇生法は実施責任を問われない、と喧伝するのも、不幸な事故を招きかねないという点で、危ないなぁと思って、見ています。
いずれにしても、「救命できなければ」責任が問われるという言い方は適切ではないと思います。
基本的に助からないのが普通ですから。救命できることのほうが稀です。
助からないという結果ではなく、状況・立場の範囲内できちんと準備がされていたか、取るべき行動を取れていたかが焦点となります。
最善を尽くしました、と言えるかどうか。
備えがなければ、その時点ですでに誠実さに嫌疑がかかり、ほぼ負けが決まっています。
posted by めっつぇんばーむ at 13:47
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| ハートセイバー(対応義務のある市民向け講習)
2019年01月01日
ACLS受講にBLS資格が必須であるとの迷信を解く
いま、日本国内にはACLSプロバイダーコースを開催していると公言しているトレーニグセンターが5つあります。
(5つには含めていませんが、国際救命救急協会、日本救急医療教育機構、ACLS JAPANも、ACLSトレーニングセンター格は持っています。しかし公募講習の形跡がなく、その活動実態が明らかではないので除外しました。)
・日本医療教授システム学会
・日本循環器学会
・日本ACLS協会
・福井県済生会病院
・日本BLS協会
これら5つのトレーニングセンターのうち、
・日本循環器学会
・日本ACLS協会
・日本BLS協会
の3つは、ACLSプロバイダーコース受講条件として有効期限内のAHA-BLS資格、もしくはBLSプロバイダーコースの受講歴が必要であると定めています。
逆に言うと、BLS資格・受講歴不要でACLSを受講できる余地を残しているのは、
・日本医療教授システム学会
・福井県済生会病院
だけです。
いまさら言うまでもなく、アメリカ心臓協会としては、ACLSプロバイダーコース受講にBLS資格が必要であるとは定めていません。
これは、ACLSインストラクターマニュアルに書かれているとおりで、インストラクターの皆さんは当然知っていることですし、市販書籍に書かれている以上、公然の事実と言えます。
しかし、トレーニングセンターは、要件としてそれを定めることができる、ともインストラクターマニュアルには書かれています。
つまり、ACLS受講にBLSが必要だというのであれば、それはAHAの言っていることではなく、トレーニングセンター(日本国内の提携法人)が定めたローカル・ルール、ということになります。
ですから、ACLS受講にBLS資格が必須とすることは、間違っていませんし、なんら非難されるべきことではありません。
この点は、まずははっきり確認しておきたいと思います。
その上で、ACLS受講にBLS資格や受講歴が必要であると独自ルールで定める団体があるのはなにゆえなのか、という点を考えてみたいと思います。
まず、考えられるのが昔のAHAルールの名残なのでは? という説。
これについては、私も正しくは知らないのですが、どうやら昔は、ACLS受講には有効期限内のBLS資格が必要だとしていた時代があったようだ、という話は聞いたことがあります。
ただ、あくまでも伝聞で、根拠は持ち合わせていません。
私がAHAインストラクターになったのはG2005に切り替わる前後の頃で、かろうじてG2000時代を経験しています。少なくともその時代のAHAルール(PAM)には、BLSが必須という規定がなかったことは、はっきり覚えています。
ですから、あったとしたらG2000以前の話。
ただ逆に、少なくとも2005年以降は、ACLS受講にBLS資格は不要だったとは言い切れます。今は2019年ですから、過去14年くらいは、AHA公式としてはBLSは必須でない時代が続いているのは確かです。
この意見は、まあ、うなずけます。このこと自体は私も否定しません。
しかし、BLSができることと、AHA-BLSプロバイダーコースを履修していることはイコールではありません。
ACLSで求められているのは成人への一人法BLSとAED操作、バッグマスクスキルだけであり、それらは4−5時間のBLSプロバイダーコースでなくても習得できる一般技能です。
そしてその程度の訓練は、いまは病院の職員トレーニングとして普通にやっています。
さらに言えば、この程度のCPR技術は、仮にBLSの素養がまったくない人であっても、ACLSプロバイダーコース中のBLSセクションで十分に習得可能であるという点です。
ACLSコースの中で、いきなりBLS実技試験が行われるわけではなく、質の高いBLSの科学的背景に関するDVD解説や、ビデオを見ながらのPWW練習を経た上で、BLS試験に臨みますよね。このプロセスを考えてもらっても、ACLS受講者に完璧なBLS習得を求めているわけではないことはわかります。
ほんとに条件であるなら、つべこべ言わずにいきなり試験をして落とせばいいわけですから。
成人の不整脈起因の心停止や救急対応に限定したACLSコースでは、BLSプロバイダーコースで必須とされている小児や乳児の蘇生、窒息解除などはオーバースペックです。
医療従事者たるもの、これらも知っておくべきであるという点はまったくもって同意しますが、だからといってBLSプロバイダーコースを経ないと成人の二次救命処置を学ぶ資格がない、と言うのは暴言に近いでしょう。
米国の一般事情として、病院で働く以上、BLS資格を持っているのは当たり前で、その資格がなければ働けないというのは実態としては事実だと思います。
だから、制度上、ACLSを受ける医療者であればBLS資格を持っているのはあたりまえという意見を聞くこともあります。
このもっともらしい主張も下記の2点で私は懐疑的です。
ACLSインストラクターマニュアルに書かれていますが、ACLSプロバイダーコース内で、オプションとして乳児BLSの実技試験と、BLSプロバイダーコースの筆記試験を実施すれば、それだけでBLSプロバイダーカードを発行できることが規定されています。
DVDを見て、段階的に練習して、、、という4-5時間をかけなくても、BLSの試験に合格すればAHA-BLS資格を取れるのです。
こんなオプションが規定されているということは、そもそもACLS受講に資格としてのAHA-BLSは不要であるということの証左です。
米国の医療者が職業義務としてBLS資格取得と維持が求められているのが事実だとしても、ここは日本です。米国の慣習を真似る必然性はありません。
AHAが定める範囲内において、日本の事情、慣習に合わせて運用すればいいので、アメリカではそうだから、というのはなんの強制力もありません。
日本でもBLSを必須とするのであれば、それはACLSコースを主催する団体やインストラクターの強い思い、考え、判断ということになります。
ということで、結論とすれば、なぜ日本のITCがACLS受講にBLSを求めているのか、納得できる理由はあまり見いだせないのですが、ここから先は私の勝手な想像、というか邪推です。
日本にACLSが入ってきた2003年頃だと思います。ACLSはBLSを受講した人でないと受けられないという話が浮上して固まってきたのもこの頃です。
当時からAHAの運営マニュアルであるPAMには、BLSは必須ではないということは書かれており、日本にAHA講習を持ちこんだ人たちもそのことは認識していたことと思います。
しかし、あえてBLS必須というルールにしたのでしょう。
というのは、ひとつは当時日本にはBLSですら標準化されたものがなく、本当にBLSの質が担保できていなかったからです。
医療者ならBLSができて当たり前という文化意識もありませんでした。
しかし、それから15年以上が経過し、今はどうでしょうか?
どの病院でも職員研修としてBLS訓練をしており、ACLSプロバイダーコース内BLS実技試験程度の一人法CPRとAEDくらいはふつうに教えています。
昔とは違うのです。
昔からACLSを開催しているところは、なんとなく昔のやり方をずるずるひきづってるだけなのでは?
というのが私の考える理由の1つ目です。
もう一つの理由は、経済的な理由、営業戦略なのでは? という点です。
ACLS受講にBLSが必須となれば、ACLSだけでいいと思っている医師たちからも余分に1万8千円(日本国内の平均受講料)を取れるわけですから。
当時はBLSもACLSも国内ではトレーニングセンター(当時はITOと言ってました)がひとつしかなく、独占状態でした。
ゆえの経営戦略なのかな、と。
しかし、今は10以上のBLSトレーニングセンターが認可されていますので、この独占営利的な意味は薄くなっています。かつては、◯◯で発行されたBLSプロバイダー資格でないと認めないとするところもありましたが、さすがに今はこのような縛りは撤廃されているようです。
こう考えてみると、現代日本において、ACLS受講にBLSを必須です、とする実質的な意味はなく、むしろ、受講者からしたら、そこでの受講を敬遠するマイナス要因でしかないんじゃないかな、と思うのですが、いかがでしょうか?
最新版のACLSインストラクターマニュアルでも、トレーニングセンターがBLS必須とする権利は認められているので、ポリシーをもってやってるならいいのですが、時代も変わってきたことですし、顧客目線で抜本的にも直してみてもいいのでは? と思う次第です。
(5つには含めていませんが、国際救命救急協会、日本救急医療教育機構、ACLS JAPANも、ACLSトレーニングセンター格は持っています。しかし公募講習の形跡がなく、その活動実態が明らかではないので除外しました。)
・日本医療教授システム学会
・日本循環器学会
・日本ACLS協会
・福井県済生会病院
・日本BLS協会
これら5つのトレーニングセンターのうち、
・日本循環器学会
・日本ACLS協会
・日本BLS協会
の3つは、ACLSプロバイダーコース受講条件として有効期限内のAHA-BLS資格、もしくはBLSプロバイダーコースの受講歴が必要であると定めています。
逆に言うと、BLS資格・受講歴不要でACLSを受講できる余地を残しているのは、
・日本医療教授システム学会
・福井県済生会病院
だけです。
AHA的にはBLS受講歴・資格は不要!
いまさら言うまでもなく、アメリカ心臓協会としては、ACLSプロバイダーコース受講にBLS資格が必要であるとは定めていません。
これは、ACLSインストラクターマニュアルに書かれているとおりで、インストラクターの皆さんは当然知っていることですし、市販書籍に書かれている以上、公然の事実と言えます。
しかし、トレーニングセンターは、要件としてそれを定めることができる、ともインストラクターマニュアルには書かれています。
つまり、ACLS受講にBLSが必要だというのであれば、それはAHAの言っていることではなく、トレーニングセンター(日本国内の提携法人)が定めたローカル・ルール、ということになります。
ですから、ACLS受講にBLS資格が必須とすることは、間違っていませんし、なんら非難されるべきことではありません。
この点は、まずははっきり確認しておきたいと思います。
じゃあ、なにゆえにBLS資格を求めるのか?
その上で、ACLS受講にBLS資格や受講歴が必要であると独自ルールで定める団体があるのはなにゆえなのか、という点を考えてみたいと思います。
仮説1 昔の名残り
まず、考えられるのが昔のAHAルールの名残なのでは? という説。
これについては、私も正しくは知らないのですが、どうやら昔は、ACLS受講には有効期限内のBLS資格が必要だとしていた時代があったようだ、という話は聞いたことがあります。
ただ、あくまでも伝聞で、根拠は持ち合わせていません。
私がAHAインストラクターになったのはG2005に切り替わる前後の頃で、かろうじてG2000時代を経験しています。少なくともその時代のAHAルール(PAM)には、BLSが必須という規定がなかったことは、はっきり覚えています。
ですから、あったとしたらG2000以前の話。
ただ逆に、少なくとも2005年以降は、ACLS受講にBLS資格は不要だったとは言い切れます。今は2019年ですから、過去14年くらいは、AHA公式としてはBLSは必須でない時代が続いているのは確かです。
仮説2 ACLSはBLSができる前提で成り立っているから、受講すべき
この意見は、まあ、うなずけます。このこと自体は私も否定しません。
しかし、BLSができることと、AHA-BLSプロバイダーコースを履修していることはイコールではありません。
ACLSで求められているのは成人への一人法BLSとAED操作、バッグマスクスキルだけであり、それらは4−5時間のBLSプロバイダーコースでなくても習得できる一般技能です。
そしてその程度の訓練は、いまは病院の職員トレーニングとして普通にやっています。
さらに言えば、この程度のCPR技術は、仮にBLSの素養がまったくない人であっても、ACLSプロバイダーコース中のBLSセクションで十分に習得可能であるという点です。
ACLSコースの中で、いきなりBLS実技試験が行われるわけではなく、質の高いBLSの科学的背景に関するDVD解説や、ビデオを見ながらのPWW練習を経た上で、BLS試験に臨みますよね。このプロセスを考えてもらっても、ACLS受講者に完璧なBLS習得を求めているわけではないことはわかります。
ほんとに条件であるなら、つべこべ言わずにいきなり試験をして落とせばいいわけですから。
成人の不整脈起因の心停止や救急対応に限定したACLSコースでは、BLSプロバイダーコースで必須とされている小児や乳児の蘇生、窒息解除などはオーバースペックです。
医療従事者たるもの、これらも知っておくべきであるという点はまったくもって同意しますが、だからといってBLSプロバイダーコースを経ないと成人の二次救命処置を学ぶ資格がない、と言うのは暴言に近いでしょう。
仮説3 米国の医療者でBLS資格を持っていない人がACLSを受けることはありえない
米国の一般事情として、病院で働く以上、BLS資格を持っているのは当たり前で、その資格がなければ働けないというのは実態としては事実だと思います。
だから、制度上、ACLSを受ける医療者であればBLS資格を持っているのはあたりまえという意見を聞くこともあります。
このもっともらしい主張も下記の2点で私は懐疑的です。
1.ACLSコース受講と同時にBLSプロバイダー資格を取得できる制度がある
ACLSインストラクターマニュアルに書かれていますが、ACLSプロバイダーコース内で、オプションとして乳児BLSの実技試験と、BLSプロバイダーコースの筆記試験を実施すれば、それだけでBLSプロバイダーカードを発行できることが規定されています。
DVDを見て、段階的に練習して、、、という4-5時間をかけなくても、BLSの試験に合格すればAHA-BLS資格を取れるのです。
こんなオプションが規定されているということは、そもそもACLS受講に資格としてのAHA-BLSは不要であるということの証左です。
2.ここは米国ではない
米国の医療者が職業義務としてBLS資格取得と維持が求められているのが事実だとしても、ここは日本です。米国の慣習を真似る必然性はありません。
AHAが定める範囲内において、日本の事情、慣習に合わせて運用すればいいので、アメリカではそうだから、というのはなんの強制力もありません。
日本でもBLSを必須とするのであれば、それはACLSコースを主催する団体やインストラクターの強い思い、考え、判断ということになります。
結局、なぜ?
ということで、結論とすれば、なぜ日本のITCがACLS受講にBLSを求めているのか、納得できる理由はあまり見いだせないのですが、ここから先は私の勝手な想像、というか邪推です。
日本にACLSが入ってきた2003年頃だと思います。ACLSはBLSを受講した人でないと受けられないという話が浮上して固まってきたのもこの頃です。
当時からAHAの運営マニュアルであるPAMには、BLSは必須ではないということは書かれており、日本にAHA講習を持ちこんだ人たちもそのことは認識していたことと思います。
しかし、あえてBLS必須というルールにしたのでしょう。
というのは、ひとつは当時日本にはBLSですら標準化されたものがなく、本当にBLSの質が担保できていなかったからです。
医療者ならBLSができて当たり前という文化意識もありませんでした。
しかし、それから15年以上が経過し、今はどうでしょうか?
どの病院でも職員研修としてBLS訓練をしており、ACLSプロバイダーコース内BLS実技試験程度の一人法CPRとAEDくらいはふつうに教えています。
昔とは違うのです。
昔からACLSを開催しているところは、なんとなく昔のやり方をずるずるひきづってるだけなのでは?
というのが私の考える理由の1つ目です。
もう一つの理由は、経済的な理由、営業戦略なのでは? という点です。
ACLS受講にBLSが必須となれば、ACLSだけでいいと思っている医師たちからも余分に1万8千円(日本国内の平均受講料)を取れるわけですから。
当時はBLSもACLSも国内ではトレーニングセンター(当時はITOと言ってました)がひとつしかなく、独占状態でした。
ゆえの経営戦略なのかな、と。
しかし、今は10以上のBLSトレーニングセンターが認可されていますので、この独占営利的な意味は薄くなっています。かつては、◯◯で発行されたBLSプロバイダー資格でないと認めないとするところもありましたが、さすがに今はこのような縛りは撤廃されているようです。
こう考えてみると、現代日本において、ACLS受講にBLSを必須です、とする実質的な意味はなく、むしろ、受講者からしたら、そこでの受講を敬遠するマイナス要因でしかないんじゃないかな、と思うのですが、いかがでしょうか?
最新版のACLSインストラクターマニュアルでも、トレーニングセンターがBLS必須とする権利は認められているので、ポリシーをもってやってるならいいのですが、時代も変わってきたことですし、顧客目線で抜本的にも直してみてもいいのでは? と思う次第です。
posted by めっつぇんばーむ at 19:38
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2018年12月21日
AHA講習に義務化 CPRフィードバック装置は諸刃の剣?
さて、気づけば年末ですね。
2019年がやってくるわけですが、この年末年始はAHAインストラクターにとっては、特にざわつく落ち着かないときかも知れません。
2019年1月以降は、成人CPR講習にフィードバック装置を使うことが義務付けられるからです。さらには、eCardへの切り替えを検討しているトレーニングセンターも多いことでしょう。
フィードバック装置に関して言えば、世界中のすべてのAHA講習に適応されますので、いまはフィードバック装置追加購入の駆け込み需要で、品薄状態となっているようです。先日、米国のディストリビューターに問い合わせたインストラクター仲間は3ヶ月待ちと言われたそうです。
AHAとしては、今回のフィードバック装置必須化のために2年前からアナウンスを始めて、その有用性のPRに努めてきました。
質の高いCPRを追求すべきなのは言うまでもありません。
その質を主観的評価にするのではなく、定量的に評価しましょう、といわれているのがACLS。
ACLSでは胸骨圧迫の質に関して、100〜120回/分とか少なくとも5cmというある救助者側の主観的な評価ではなく、呼気終末二酸化炭素濃度や、拡張期血圧といった生理学的な代理指標に着目した科学的な質コントロールが提唱されています。
そういった科学的な定量的評価と、徒手空拳的なBLSの主観的な質評価の間に位置するのがフィードバック装置です。
深さ、テンポ、戻り、中断時間などを表示し、修正の指示をくれる機種もあります。
非常に有用な道具ではあるのですが、トレーニングにおいて使用する場合は注意が必要、と私は考えています。
日頃から離床でフィードバック装置を使っている施設でのBLS講習はすべての練習においてフィードバック装置を使うべきでしょう。
しかし、皆さん、ご存知の通り、フィードバック装置を臨床でルーチン使用している施設はごくごく一部です。
現場で使わない道具であるフィードバック装置を練習で使う意義。
これは、練習者が自身のCPRの質を、インストラクターの主観ではなく、客観的に自己評価できるという点では意義があるでしょう。
しかし、大事な視点として、現場にはフィードバック装置はない、というのを忘れてはいけません。
講習中に終始、フィードバック装置を使用すると、受講者はフィードバック装置のメーターに依存するようになります。
これは、BLSプロバイダーコースの10分間のチーム蘇生の場面でフィードバック装置を使うと顕著です。眼の前で繰り広げられるCPRではなく、モニター画面をじっと見るようになるのです。
ACLSでは、モニターばかり見るな! とはよく言われますが、おなじ現象がBLSでも起きてしまうというのは皮肉な話です。
AHAとしてはフィードバック装置をコース中、使わなくてはいけない、とは言っているものの、具体的にコース中のどの場面で使うのかという具体的な指示はありません。
どの場面でどう使うかという点をインストラクターはよく考えたほうがいいでしょう。
フィードバック装置は自己点検的に使いつつ、最終的には機械を頼らなくても自身の勘どころとしての圧迫のテンポを身につけられるように指導をすべき、と私は考えています。
その目的のための補助装置として活用するならフィードバックは極めて有用なものでしょう。
インストラクター側の認識と使い方によっては、受講者のCPR能力を潰すことにもなりかねない。
そんな本気度をもって、インストラクターはフィードバック装置の活用法を真剣に考えないといけません。
2019年がやってくるわけですが、この年末年始はAHAインストラクターにとっては、特にざわつく落ち着かないときかも知れません。
2019年1月以降は、成人CPR講習にフィードバック装置を使うことが義務付けられるからです。さらには、eCardへの切り替えを検討しているトレーニングセンターも多いことでしょう。
フィードバック装置に関して言えば、世界中のすべてのAHA講習に適応されますので、いまはフィードバック装置追加購入の駆け込み需要で、品薄状態となっているようです。先日、米国のディストリビューターに問い合わせたインストラクター仲間は3ヶ月待ちと言われたそうです。
AHAとしては、今回のフィードバック装置必須化のために2年前からアナウンスを始めて、その有用性のPRに努めてきました。
質の高いCPRを追求すべきなのは言うまでもありません。
その質を主観的評価にするのではなく、定量的に評価しましょう、といわれているのがACLS。
ACLSでは胸骨圧迫の質に関して、100〜120回/分とか少なくとも5cmというある救助者側の主観的な評価ではなく、呼気終末二酸化炭素濃度や、拡張期血圧といった生理学的な代理指標に着目した科学的な質コントロールが提唱されています。
そういった科学的な定量的評価と、徒手空拳的なBLSの主観的な質評価の間に位置するのがフィードバック装置です。
深さ、テンポ、戻り、中断時間などを表示し、修正の指示をくれる機種もあります。
非常に有用な道具ではあるのですが、トレーニングにおいて使用する場合は注意が必要、と私は考えています。
日頃から離床でフィードバック装置を使っている施設でのBLS講習はすべての練習においてフィードバック装置を使うべきでしょう。
しかし、皆さん、ご存知の通り、フィードバック装置を臨床でルーチン使用している施設はごくごく一部です。
現場で使わない道具であるフィードバック装置を練習で使う意義。
これは、練習者が自身のCPRの質を、インストラクターの主観ではなく、客観的に自己評価できるという点では意義があるでしょう。
しかし、大事な視点として、現場にはフィードバック装置はない、というのを忘れてはいけません。
講習中に終始、フィードバック装置を使用すると、受講者はフィードバック装置のメーターに依存するようになります。
これは、BLSプロバイダーコースの10分間のチーム蘇生の場面でフィードバック装置を使うと顕著です。眼の前で繰り広げられるCPRではなく、モニター画面をじっと見るようになるのです。
ACLSでは、モニターばかり見るな! とはよく言われますが、おなじ現象がBLSでも起きてしまうというのは皮肉な話です。
AHAとしてはフィードバック装置をコース中、使わなくてはいけない、とは言っているものの、具体的にコース中のどの場面で使うのかという具体的な指示はありません。
どの場面でどう使うかという点をインストラクターはよく考えたほうがいいでしょう。
フィードバック装置は自己点検的に使いつつ、最終的には機械を頼らなくても自身の勘どころとしての圧迫のテンポを身につけられるように指導をすべき、と私は考えています。
その目的のための補助装置として活用するならフィードバックは極めて有用なものでしょう。
インストラクター側の認識と使い方によっては、受講者のCPR能力を潰すことにもなりかねない。
そんな本気度をもって、インストラクターはフィードバック装置の活用法を真剣に考えないといけません。
posted by めっつぇんばーむ at 22:37
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