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2018年03月24日

BLSプロバイダーコース指導がいちばん難易度が高い理由

久々の更新です。

BLSに関しては、最近は後輩育成が中心となっています。

G2015コースに切り替わって、もう久しいですが、改めて思うのはBLSプロバイダーコースって難しいなという点です。

BLS、ACLS、PEARS、PALSと比べてみたら、内容のシンプルさでいえばBLSが一番簡単そうですが、ところがどっこいAHA-ECCプログラムの中で、指導という点ではいちばんやっかいなのがBLS。

なにが大変って、ひとえにビデオベースってところですね。

PWW(Practice while Watching)というDVD映像を見ながら真似して練習するAHAの専売特許的な指導法。これが最大限に発揮されたのがBLSプロバイダーコースなので、インストラクターは受講者をビデオに合わせて動くように誘導しなくちゃいけない。

これが難しいんです。

同じPWWでも「対応義務のある市民救助者」向けのハートセイバーCPR AEDコースは、ビデオの作りが丁寧なので、逆にインストラクターはビデオ操作をするだけで簡単に進行できるのですが、AHAはヘンに玄人向けなので、中途半端な省略がいただけない。

例えば、人工呼吸練習では、ポケットマスクはマスク・フォールドがいちばん難しいのに、画像をみて真似しているヒマがなく、スッと流れてしまったり。

そもそも人工呼吸を、PWW(見ながら練習)でさせるって根本的に間違っていると思うんですよね。ポケマで呼気吹き込みしている最中に画面見てたらダメ。だって、胸が上がるか見なくちゃいけないし、入れ過ぎちゃいけないわけだし。

だから、人工呼吸のPWWで画像を見て真似する部分って、マスクの当て方の部分だけなんです。なのに肝心のそこが使えない作りってなんなんだろうと思います。

こういう素直にレッスンプランとDVD通りにやっても、うまくいかないのがBLSプロバイダーコースの難しいところ。


更にいうと、DVDプロバイダーコースの最初の実技練習、傷病者評価のところなんて最悪ですよね。

反応なしで、「誰か!」と叫ぶのはいいけど、「119番! AED!」と言うまでの間にタイムラグがある。これをふつうにやったら、受講者は多いに戸惑います。

なんなの? これ? って、キョトンとしちゃいます。

これって、教育工学的に受講者のやる気を落とすマイナス要因です。特に期待して受講したAHA講習との最初の練習が、こんなワケワカメだとかなりの打撃。

AHAガイドライン2015の教育の章に書いてあるように、インストラクショナル・デザインと成人学習理論に基づいて作りましたよ、と宣言されているのがG2015講習。

だとしたら、インストラクターも成人学習理論を踏まえた展開をするのは当然のこと。

米国人向けに作られたDVDの構成によって、日本人受講者の学習意欲を削ぐ要因があるのであれば、その溝を埋めるのが日本人インストラクターの仕事です。

トレーニングセンターによっては、標準化教育なんだから「インストラクターはコース中に喋っちゃいけない」とか言っているところもあるようですけど、教材設計の背景を考えてないんでしょうね。

ふつうに考えても、高い受講料を取って、顧客に戸惑いや不快な思いをさせちゃダメじゃないですか。

BLS-2015の最初のPWW、周りに助けを呼ぶのと、救急対応システム発動とAED手配のタイミングがずれているのには、これはこれでG2015の改訂の意図を考えればちゃんと意味がある部分で、この部分は補足説明してあげないといけないと思うわけです。



一言で言えば、BLSプロバイダーコースはガイドライン改訂の本質部分がぎっしりつまっています。これ自体はBLSコースの大きな魅力なのですが、それが指導員向けのレッスンプランに書かれていないのが問題と言えます。

この点は、ガイドラインそのものをちゃんと読めば、なるほどね! とわかるんですけどね。

この違和感の謎を解いて、大筋としてのAHAの意図を汲み取って、溝を埋めていく。

これがBLSプロバイダーコース指導の難しさです。
逆にDVDなんか使わずに、自分で指導したほうがよっぽど簡単。


この難しい部分を他のインストラクターにどう指導していくのかが、俗にいうインストラクター・トレーナー(AHA的にはFacultyといいます)の力量で、さらにはトレーニングセンターという組織母体の教材設計理解のポテンシャルなんでしょうね。






posted by めっつぇんばーむ at 23:55 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2017年12月31日

AHAインストラクターに「所属」という概念は、ない。

今、日本国内には10近くのAHA国際トレーニングセンター(ITC)が認可されています。

AHAインストラクターが、プロバイダーカードを発行する公認講習を開催するためにはこれらのトレーニングセンターのいずれかと提携している必要があります。

というのは、インストラクター個人には、プロバイダーカードの原紙の購入権限がないからです。

プロバイダーカードやインストラクターカードの原紙(台紙)を購入できるのはトレーニングセンターの責任者(TCコーディネーターと言います)だけなので、公認講習を開催し、資格認定を行うためにはトレーニングセンターとの提携が必要なのです。

この「提携」と訳した元の英語の単語は alignment です。

時々、このアライメントを「所属」と勘違いしている現役インストラクターがいるので注意が必要です。

所属というと、登録しているトレーニングセンター以外では活動できないようなイメージがありますが、そんなことはありません。

AHAインストラクターには、「所属」という概念はありません。あくまでも「提携」なのです。



インストラクター資格というものは、個人に帰属する資格であり、その資格をどう使うかは個人の自由です。

インストラクターコースを受けたのがAトレーニングセンターであっても、その後、インストラクターカードの発給を受けるのがBトレーニングセンターであっても構いませんし、最初はAトレーニングセンターで活動していても、条件が変わればBトレーニングセンターと提携を変更するのも自由です。

さらに言えば、Aトレーニングセンターと提携を結びつつ、Bトレーニングセンターとも提携を結んで、両方のトレーニングセンターで活動することも可能です。

所属ではなく、提携であるというのは、こういう意味です。

日本社会的には、株式会社A社の社員でありつつ、有限会社B社の社員ということはあまりないことなので、ピンと来ないかもしれませんが、AHAインストラクター資格というのは米国文化での資格ですから、組織ありきではなく、個人が主体であり、その個人がどこと契約を結ぶのも自由という考え方に立脚しているのです。

このことは、AHAのグランドルールが書かれたProgram Administration Manual(PAM)を見れば分かりますし、AHA Instructor Networkというインストラクター専用サイトを見てもらっても自明なのですが、日本の狭い世界観の中でインストラクターになった人にはなかなかわかりにくい部分のようです。

参考まで、下記がAHAインストラクターとして登録する際のAHA Instructor Network登録フォームの一部ですが、最初から提携先は複数選択できるように Primary TC の他、Secondary TC を入力する欄が設定されています。


インストラクターとしての提携は複数登録できる



現に私も2つのトレーニングセンターと提携していて、BLSやACLSコースを開催するときは、どっちのトレーニングセンターに書類を送るかによって、プロバイダーカードの発行元がその都度違います。

どっちに登録して開催しても、私個人の活動実績ということでは変わりません。

蛇足ながら、この「提携」は、インストラクターが自分の名前でプロバイダーカードを発行するために必要な条件であって、単なるアシスタント・インストラクターとして活動するだけなら、トレーニングセンターとの提携は関係ありません。AHAインストラクター資格を持っていれば、世界中のどこのトレーニングセンターの講習会にも正式にスタッフ参加できます。


これが本来のAHAインストラクターとしての在り方です。

この提携を「所属」と勘違いしていると、いろいろと理解できない点が生じてくるんでしょうね。

組織によっては、作為的に所属という言い方をして、他の選択肢を与えない、自分のところに縛り付けたいと考えるところもあるのかもしれません。

しかし、もともと米国文化にもとづいて作られた制度で、その情報はすべて開示されています。

AHAには、日本社会の悪いところでもある「上が言うとおりにしていればいい」という文化はありませんので、AHAインストラクターとしての誇りの下、自分で情報にアプローチして、自分の頭で考えられるインストラクターでありたいですね。


posted by めっつぇんばーむ at 20:28 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2017年11月29日

救命法指導員は、その重い責任を自覚すべし−「AED充電中の胸骨圧迫」編

心肺蘇生法とかBLSのインストラクター/指導員って、責任重大で、実はハイリスクな仕事なんじゃないの? という点で、前回は 人工呼吸省略を教える危険性 についてお話しましたが、今回はその続きとして、AEDの充電中に胸骨圧迫を行うように指導することについて取り上げます。


AEDを使う際に、心電図解析の後、充電中の僅かな時間でも胸骨圧迫を行うようにと教わった方、いませんか?


結論からいうと、これは日本ではNG、やってはいけない間違った指導なのですが、そのように教えている指導員が少なからず存在しているようです。

AED充電中に胸骨圧迫を行ってはいけない理由は、大きく2つです。


 1.胸骨圧迫を体動と判断して充電がキャンセルされる可能性があるから
 2.AEDの指示に従わない動作であるから ← 医師以外が除細動を行う法的要件から外れる



この問題は、ガイドライン2010の頃から持ち上がるようになりました。特にACLSプロバイダーコースの中のBLSデモ映像の中では、AEDを使う場面で明らかに充電中に胸骨圧迫を行っており、これを日本ではどう指導するかという点が日本人インストラクターの間では話題となった記憶があります。

時を経て、ガイドライン2015のBLSプロバイダーコースのDVDでは、IFP(病院内)設定の解説の中で、AED充電中のわずかな時間でも胸骨圧迫を行うことはとても重要なことと明言されるようにもなり、(免許のもとに責任を取れる人しか受講しない)ACLSとは違って、非医療従事者の人に影響が及ぶ懸念が出てきました。

除細動の効果は、ショックの直前まで胸骨圧迫を行ったほうが優位に高いというエビデンスが出てきたのがG2010頃です。手動式除細動器を使う二次救命処置の世界では、もはや常識的になり、だからこそ、パドルショックよりパッドショックを推奨するという認識も広まってきています。

この点からすれば、AEDであっても、ショックの直前、つまり充電中も胸骨圧迫を行ったほうがよいと考えられますが、勘違いしてはいけないのは、AEDは「自動」体外式除細動器であるという点です。

AEDは心電図解析を自動で機械的に行います。心電図解析をするタイミングを人間がコントロールすることはできません。AEDの機種によっては、これは、ACLSやACLSでいうところの「最終波形VFです!」というチェックのため、ショック直前の充電中も心電図の解析を続けている機種があります。

もしこのタイミングで胸骨圧迫を再開してしまうと、AEDが「体動あり」と検知してしまう可能性が否定できません。そうなってしまうと、充電はキャンセルされて、除細動のショックが遅れてしまいます。ご存知の通り、除細動のショックはVF発生から速ければ速いほうがいいわけで、1分遅れると除細動成功の可能性が7〜10%下がると言われているとおりです。



また、別の観点からすると、法的な問題もあります。

電気的除細動という医行為を医師以外が行ってもよいと法解釈が示されたのが2004年7月のことです。

今でこそ、AEDは一般市民が使っても構わないという点は周知されていますが、それが解禁されたのは2004年。それ以前はダメだったのです。

医学知識のない素人が高度な治療行為である除細動を行えるように敷居が下がったのは、心電図読影機械が判断してくれて、その機械の指示通りに使う限り、素人であっても安全に使えることが実証されたからです。

この安全性は、「AEDの指示に従って操作すること」が前提条件となっています。これから外れたことを行ってしまうと、医療知識がない人がAEDを安全に使えるという担保がなくなってしまうというのは、考えてみればわかると思います。

ここでいうAEDの指示というのは、言い換えれば医師の指示みたいなものです。

医師が離れろと指示しているのに、それに反して胸骨圧迫を行っていいのか? と考えてみればわかりやすいかもしれません。

現在、日本国内で承認を受けているAEDの中で、充電中に胸骨圧迫を再開するように指示する機種は1つもありません。

従って、日本国内のAED講習において、充電中に胸骨圧迫をするように、と指導するのは正しくありません。



また、もともとAED講習で受講者に教えるべき最も重要なポイントに立ち返ってみると、

1.電源を入れる
2.AEDの指示を聞いて、それに従って行動する

この2点に関して異論はないかと思います。

すべての心肺蘇生法指導者は上記を伝えているはずです。それなのに、AEDの「患者に触れないでください」という、AED指示を無視した行動を教えるというのは矛盾していますよね。

特にこの点は、日頃ACLSやICLSで手動式除細動器での蘇生指導に携わる医師や看護師に多い印象があります。

手動式除細動器とAEDの違いを正しく認識することが重要です。

そして、医学的な正しさと、製品・機械の特性と仕様上の正しさは、かならずしも一致しません。さらに言えば法律的な正しさも…


いまは除細動の遅れが過失であるとして訴訟が起きる時代になっています。

院内での心室細動に対する早期除細動(原総合法律事務所Web)
http://www.haralawoffice.com/archives/1623

AEDの充電中に胸骨圧迫をしたことが原因で、除細動の遅れてしまった。BLSインストラクターにそうしろと指導されたから、、、、ということになったら、、、どうでしょう?

救命法指導員はその責任を自覚して、正しい情報をブラッシュアップし続ける努力が必要です。



posted by めっつぇんばーむ at 11:37 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2017年11月15日

救命法指導員は、その重い責任を自覚すべし−「人工呼吸の省略」編

心肺蘇生法とかBLSのインストラクター/指導員って、責任重大で、実はハイリスクな仕事なんじゃないの? という話を2つほど書こうと思いますが、まずは人工呼吸の扱いについて。



人工呼吸を行わなかったことが過失となった例

ちょっと前に、耳鼻科クリニックでの小児の心停止対応で、胸骨圧迫しか実施せず、人工呼吸を行わなかったことが過失ありと判断された裁判がありました。

胸骨圧迫のみの蘇生法の実施が、過失であるとされた、ある意味、衝撃的な案件です。



女児救命措置に過失 診療所に6100万円賠償命令

(河北新報 2016年12月28日)
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201612/20161228_13014.html

医療過誤事例報告 適切な心肺蘇生を行わなかった過失を認めた事例

(坂野法律事務所 Web)
http://www5b.biglobe.ne.jp/~j-sakano/sosei1.html



このクリニックでは、2名の看護師と1名の医師で対応したようですが、唯一、BLS訓練を受けていた看護師が胸骨圧迫を行ったものの、他の誰も人工呼吸は行ないませんでした。

実は、このクリニックにはバッグマスクが置いてなかったので、やろうと思ってもできなかったという側面もあるのですが、被告側は「胸骨圧迫のみによる蘇生が推奨された時期もある」と述べて、人工呼吸をしなかったことの正当性を訴えています。


このことから、その耳鼻科クリニックの医療従事者は小児救命における人工呼吸の重要性を理解していなかった、もしくは誤解していた可能性が考えられます。


ここで考えたいのは、最近、世間で広まっている「人工呼吸はしなくていい」という一般市民向けの啓蒙情報です。



この耳鼻科クリニックのスタッフがどこでBLSトレーニングを受けたのかはわかりませんが、もし、「いまは人工呼吸はしなくていいんだ」と誰かに教わって、それを鵜呑みにしたゆえに起きたのが今回の事案だとしたら、、、、


救命法の指導員の言うとおりにしたら、訴えられて負けた。。。


そんな可能性を想像するとゾッとします。人の生死を分ける行為とも言えるBLSを教える立場の人にも大きな責任があると言わざるを得ません。



胸骨圧迫のみの救命講習プログラムの確立などで、心肺蘇生法を教えることの敷居が低くなったのはいいのですが、半面、救命法指導員の質という点では、極めて危ういもの感じています。

胸骨圧迫のみの蘇生法は、一言で言えば素人向けのやり方であって、職業人が業務上、行うようなものではありません。

指導員はそこをきちんと理解しておく必要がありますし、指導員を養成する立場の人は、その限界を正しく伝える責務があります。

例えば、胸骨圧迫のみの救命講習を医療従事者向けに開催するとか、保育士、小学校の教職員に教えるというのは、筋違いの話だと思っています。


今回、「過失あり」ということで賠償責任を負ったのは医療法人ですが、日本の蘇生法ガイドラインの中では、子どもの蘇生に関しては、医療従事者が学ぶものと学校教職員などが学ぶものの区別はされていません。

そのことからすると、学校現場においても、今回のクリニックと同様の裁判が起こり、人工呼吸をしないことが過失と見なされるような事案が発生することも、将来的にありえない話ではありません。


責任のない立場である一般市民に教えることとと、学校教職員や医療従事者のように注意義務が発生する立場の人に教える心肺蘇生法をきちんと区別しないと、善意から良かれと思って教えたことでも大変なことになるかもしれない、そんな覚悟が救命法指導員には必要です。


2017年10月29日

BLS/ACLS スキル獲得と資格取得の意味の違い

私は、AHA-BLSインストラクターとして、BLSプロバイダーコースや、ハートセイバー・ファーストエイドなど資格認定コースを開催していますが、併せて応急手当普及員として普通救命講習Iという消防庁認定資格の発行もしています。

片や、そういった特定団体の公認講習とは別に、自分自身で組み立てたオリジナルのBLS講習やファーストエイドプログラムを有償でやることもありますし、地域貢献活動として無償ボランティアとしてCPRセミナーを開催することもあります。


私からすれば、対象や目的に合わせて最適なものを提案するだけです。規定の◯◯コースがマッチするのであればそれを提供するし、なければ作ればいいだけで。別に◯◯コースに誘導しようという気はサラサラありません。

だって、◯◯コースにすると、教えなくちゃいけない内容が決まっちゃうから、柔軟性がなくなっちゃうんですよね。

◯◯コースのいいところは、幅広くいろんな対象に無難に対応できるように浅く作られているところ。逆言えば、具体的にターゲットが絞られている場合は浅すぎて力不足です。


資格が必要という人には資格認証手数料が掛かる有料講習を提案しますし、資格なんていらない、技術が身につけばいいんだという人には、より短い時間で現場のニーズに合わせた焦点化した講習を廉価で提供しています。



BLSとか救命講習を受講することの目的とか意義ってなんなんでしょうね?



受講料が高い安いという意見を聞くにつけ、いつも、このことを考えてしまいます。


スキル獲得資格取得 という2つの側面があると思うのですが、ここをごっちゃにしているから不毛な議論が多いんじゃないでしょうか?

資格が必要というのなら、高いお金を出してでも、◯◯コースを受ける必要があるでしょう。

私個人が勝手に資格を作って証明書を発行してもいいのですが、きっと名前の知れた大きな組織の公認証書じゃないと意味をなさないと思います。だったら、ブランド料というかパテント料として、料金が高くなるのは致し方ないですよね。


しかし、日本においては救命スキルに関しては意識が低く、資格を求められるケースはあまりありません。

特に医療従事者に関して言えば、例えば医師免許とか看護師免許を持っていれば、BLSなんて当然できるものとして認知されていますので、ことさらBLS資格とかACLS資格とか求められていないのが現状です。

であれば、日本の医療従事者にとっては救命スキルに関しては、資格という側面での意義はあまりなく、技術獲得さえできればOKといえます。

そう考えると、いちばん良いのは病院とかの職場単位で自院に合わせた形で研修プログラムを作って習得させるのが最善と言えるでしょう。


◯◯コースだと、資格を発行する関係上、その病院には必要のないスキル(例えば小児蘇生とか、オピオイド過量とか)までも時間をかけて教えなくちゃいけないので、そんなのは無駄です。


今では、多くの病院施設で、自前でBLSトレーニングを実施するところが多くなってきていますよね。

同じようにACLSもやっていけばいいんです。公認講習にするから受講料が何万円だとかそういう話になるので、自施設で自前の機材で自院スタッフが業務時間内で教えれば、支出はゼロです。


それができなくて外部に委託するのであれば、講師料を含めてお金が発生するのは当然のこと。

現実問題、蘇生法の指導員を育成するのはなかなか難儀で時間もかかります。

自前のトレーニング・プログラム開発と指導員養成までの経費を考えたときに、外部のプロに委託したほうが結果的には安くつくと判断する病院もあります。

またオリジナル研修では、資格認証という点では弱いという点に着目する病院組織もあります。例えば国際病院機能評価JCI認証を狙う病院では、その点が顕著です。

資格の持つ意味として、病院の患者安全意識のPRや、訴訟対策という視点もあります。いくら自分たちできちんとトレーニングしていると言っても、それを証明するものがないと主張が弱いと考えれば、社会的に認知されている資格にすがるのも手です。


医療従事者はすべからくBLSができるべきで、部署によってはALSも必須。

そこに異論はありませんが、自前でトレーニングできているのであれば、あえてお金をかけての「受講」はいらないと思いますし、病院や個人として資格のメリットを感じないのであれば、資格なんて不要です。

提供する側は、持っているスキルや資格に応じて、いろいろなプログラムを提供します。

ユーザーや依頼する側は、目的に合わせて選べばいい。それだけだと思います。



posted by めっつぇんばーむ at 23:02 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2017年10月18日

AHA講習中は禁煙です。休憩時間にタバコを吸っているインストラクターがいたら通報しましょう

アメリカ心臓協会 AHA 講習は禁煙です。

講習中、会場内はもちろん、会場施設敷地内での喫煙も禁じられています。

AHA講習(BLS/ACLS/PALS/PEARS)は禁煙です

AHAプログラム運営マニュアル(PAM)日本語版より


喫煙癖のある受講者の方は、その日、1日朝からずっとタバコを吸わないつもりでいて下さい。

当然ですが、AHA講習では喫煙所のアナウンスはありません。

だからと言って、昼休みに近くのコンビニまで行ってタバコを吸おうなんてことが考えないで下さい。

最大3人で交代しながら、呼気吹き込みを行うBLSマネキン。煙草臭くなったら、他の受講者に迷惑です。



アメリカ心臓協会(AHA)は、心臓病と戦う学術団体です。

AHA Fighting Heart Disease and Stroke


心臓病や脳卒中のリスクを有意に高めることが証明されているタバコを許容することはできません。

そんなスローガンに賛同して、自らAHA-ECCプログラムの推進に身を捧げることを志したAHAインストラクターたちは、もちろんタバコを忌避しています。

そんなインストラクターたちが、タバコ臭かったり、ましてや、休憩時間にタバコを吸いに行っているということはAHAポリシーからしてあり得ないことです。


受講者の皆様、万が一、タバコの匂いを漂わせているAHAインストラクターがいたとしたら、それは大問題です。

講習の最後に、コースの評価表と呼ばれるアンケート用紙が配られます。

2016_Japanese_BLS_Course_Evaluation.png


アンケート用紙に喫煙するインストラクターがいて、不快であったことをはっきり書くようにしましょう。

またコース中に、喫煙所に関するアナウンスがあったとしたら、コース全体に関わるAHAポリシーに反する「重大な問題」です。

アンケート用紙の末尾に書かれている通り、AHAの国際部門(ECCinternational@heart.org)に直接通報していただくようにお願いいたします。

以上、スモークフリーな学習環境維持のために、皆様ご協力いただけますよう、切にお願い申し上げます。




posted by めっつぇんばーむ at 21:49 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2017年09月03日

考察「ウィルダネス・ファーストエイドの法的懸念に対する声明」

ブログの過去記事で取り上げたことがありますが、北米で発展した野外救命法(ウィルダネス・ファーストエイド)プログラムが日本国内で広がるにあたり、そこに含まれる医行為の法的位置づけが問題となっています。


「山と渓谷」ウィルダネス・ファーストエイド記事補完(2011年7月20日)
ウィルダネス・ファーストエイドの医行為に関する法的考察(2010年9月16日)


先ごろ、おそらく日本国内でもっともアクティブに活動しているウィルダネス・ファーストエイド教育プロバイダーのWMA JAPANが、ウィルダネス・ファーストエイドに含まれる医行為に関する声明を発表しました。

WMA JAPANは以前から、厚労省への照会や顧問弁護士を付ける等の法的な取り組みをしていることを広報しており、法的問題には積極的に取り組んできた団体と認識しています。

今回の声明も、業界としては非常に画期的な出来事であろうと思います。

中身はというと、法律の話なので、読み手によっては理解しづらいところもあるように感じますので、すこし解説を加えようと思います。

この公式見解は、一般社団法人 ウィルダネス メディカル アソシエイツ ジャパンのFacebookページで公開されています。まずはこちらをご覧ください。

WMA野外・災害救急法への法的な懸念


論旨をまとめますと、まず、結論は下記のとおりです。

「したがって、WMA野外災害救急法を躊躇せずに、参加者の命を救うべきである。」

命題は、3つです。

・医師法違反への懸念
・傷害罪(刑法)への懸念
・緊急時無管理(民事責任)への懸念

この3点に関する懸念に対して検討した結果ということで、上記のように述べているという論理構造になっています。ひとつひとつ解説していきます。


1.医師法違反への懸念

これは、WMA JAPANの声明の通り、医師法違反を問われる可能性は低いと考えられます。反復継続の意志の有無が問題となるわけですが、厚生労働省見解として、学校教職員がエピペン注射をするにあたって反復継続の意志がないと考えるという前例を作っています。

学校教職員は、必要とあれば2度目でも3度目でもエピペン注射をする心づもりがあり、訓練を受けているわけですが、それであっても「反復継続の意志はない」と判断されている以上、ウィルダネス・ファーストエイドにおいても、同様の判断がされるだろうと考えられます。


2.傷害罪(刑法)への懸念

これについての、WMA声明での論拠部分を引用します。

「刑法上、違法性を阻却する緊急避難は、要件が厳しく、参加者の生命・身体を守るために処置した行為が救助しようとした結果を実現しない限り、要件を満たさない危険をはらむ。そこで、より広く違法性阻却の道を確保するために、刑法35条の正当行為としての違法性阻却を認めるべきであると考える。」

この文章だけをみると、声明の結論である「したがって、WMA野外災害救急法を躊躇せずに、参加者の命を救うべきである」という文章とは、まったくつながりません。

ゆえに間をつなぐかのような下記のような一文があります。

「WMA野外災害救急法により結果的に危害を生じさせてしまった場合、弁護士により処置の必要性・相当性等が証明できれば緊急避難や正当行為として傷害罪等の刑事上の責任を問われない可能性は十分にある。」

つまり、無免許者が医行為を行ったことで危害を生じさせた場合、傷害罪を問われないためには、弁護士により処置の必要性・相当性を証明してもらう必要がある、というように読み取れます。

これをもって躊躇せずに、と結論付けられると、なるほど、と納得できる人は多くはないのではないでしょうか?


3.緊急事務管理(民事責任)への懸念

この項目では、「WMA野外救急法の手順を適切に遵守するときは重大な過失なしとされる可能性が高い」と結論づけていますが、その医行為の手順が医学的に検証されたものであったとしても、日本の法律では医師以外が医行為を行うことは想定されていないため、素人が「手順通りにやった」といって、どれだけ信用されるかは未知数です。

また本文中にも書かれていますが、緊急事務管理とは「業務上の注意義務がない時の行動を規定する」ものですから、この部分は、山岳ガイドやアウトドアガイドなど、業務として救助を行う人には適応されません。この点は十分に注意が必要です。


4.「プロトコル許可書への医師からのサイン」とはなにか?

なにより、この声明で疑問視されるのは、最初の方にある下記の一文です。

「なお、WMAカリキュラムの内容と教授法そのものへの相当性は、プロトコル許可書への医師からのサイン、ならびに医師からの証言で既に証明されていることを附言する。」

プロトコル許可証への医師からのサインがある、ということが正当性の根拠のように書かれていますが、医師を始め、医療従事者の皆さんはこれをどう理解しますか?

プロトコルで動くと言ったら救急救命士のメディカルコントロールをはじめ、看護師の特定行為についての指示書が思い浮かびます。

ウィルダネス・ファーストエイドの実施者のほとんどは医療者免許を持たない人たちなわけですが、そういった不特定多数の人たち(つまり講習受講者たち)に「プロトコル許可書」なるものを医師が発行し、サインしているという事自体がにわかには信じられないことです。

これが事実だとすれば、法的論拠や市民が行う医行為の責任の所在という点で、決定打になる可能性があるものとも考えられますが、非常に曖昧な表記となっており、詳細はうかがい知れません。この点、具体的な詳細情報が望まれます。

また後者の「医師からの証言」なるもので「証明」されていると結論付けるのには乱暴さを感じます。「ある医師が大丈夫といったから問題ないと証明された」というのであれば、その医師が誰でどのように証言したのか明示されていなければ、証明とは言えません。

この点は、この声明を当事者として受け取り、医師免許なしに医療行為を行うことを想定しているウィルダネス・ファーストエイド・プロバイダーはきちんと吟味する必要があるでしょう。

この声明は、実施者の責任を負ってくれる免罪符ではないという点、言うまでもないと思いますが、強調しておきたいと思います。



posted by めっつぇんばーむ at 23:32 | Comment(0) | ウィルダネス・ファーストエイド
2017年06月23日

自分の価値の決め方 〜1日の講師料をいくらに設定するか?

久々の更新です。

インストラクターとしての報酬の決め方の話です。

BLSとかACLSみたいに、ひとりあたりの受講料をいくらと決めるのは、簡単です。
なんとなくの相場があるし、必要経費を計上して加減をすればいいから。

難しいのは病院とか保育園などからの依頼講習です。

「コース」ではなく、講演だったり、オリジナルのプログラムの依頼だったり。

こういう場合、講師としてのギャラを決めて、そこに必要経費を乗せていくという計算をしていきます。

ここでいう講師としてのギャラが、まさに自分の価値になります。

皆さんならいくらに設定しますか?


ここでは便宜上最低価格という視点で考えてみたいと思いますが、例えば1日の講師料を2万円とした場合、それは高いか低いか?

考え方として、それを今の自分の本職での給与と照らしてみると、目安が付きやすいかもしれません。

だいたい1ヶ月の労働日数は20日くらいでしょうか?

となると、2万円×20日=40万円。

月の手取りで40万円と考えたら、たいていの看護師インストラクターにとっては、やや高給という印象かもしれません。

しかし、です。

給料明細を診てもらうと分かる通り、サラリーマンの実際の給与はもっと高くて、社会保険料や年金、税金などが引かれての手取りです。

さらにいうと、病院勤務であれば、この他にボーナスの支給がありますし、年金と健康保険料は半分は病院が負担してくれているという現状もあります。

それを考えると、40万円の手取りであっても、そこから年金や保険や税金を全額自分で支払うと実質的には20万円台になってしまいます。年収で言ったらボーナス分もマイナスです。


プロのインストラクターとして対価はいくらが妥当か? そう考えると、2万円では少なそうですね。


専業、兼業で考え方が違うとは思いますが、対価をどう決めたらいいか悩むという相談をよく受けるので書いてみました。

参考になりましたら。



posted by めっつぇんばーむ at 20:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | AHA-BLSインストラクター
2017年03月24日

「勇気ある行動」の報道 その影響

今日のテーマは「報道」です。

 ロンドン、死亡警官に人工呼吸  軍出身の英下院議員


 【ロンドン共同】22日に起きたロンドンの国会議事堂周辺での襲撃事件で、犯人に刺され、倒れて血を流す警官を助けようと、口移しで人工呼吸を試みた英下院議員に称賛の声が上がっている。

 外務政務官(中東アフリカ担当)を務める保守党のトビアス・エルウッド下院議員(50)。救急隊員が到着するまでの間、警官に付き添い、自らの顔や手に血が付くのも気にせず、胸に手を当てて人工呼吸を行った。警官は努力のかいなく死亡した。

 エルウッド議員は軍出身で、2002年のインドネシア・バリ島での大規模テロで兄弟を亡くしたという。





このニュースを書いた記者が言いたかったことはなんだったのでしょうか?



無我夢中でやったこと、なのかもしれません。

現場での判断と行動。立派だと思います。

しかし、それを報道に乗せる以上、社会的なメッセージとしての意味が生じます。

礼賛される=正しい行動

ではありません。

蘇生に関する国際コンセンサスや各国ガイドラインでも、CPRによって感染したという報告はほとんどなく、危険であるとする根拠はない、と言われています。

しかし、蘇生法の国際コンセンサスは論文ベースで作られているということは忘れてはいけません。

BLSのガイドラインとファーストエイドのガイドラインを見比べてもらえば分かる通り、プレホスピタルでデータが取りにくい部分では、そもそも研究されておらず、良いも悪いも判断するデータそのものがなかったりするのです。

そして、なにより蘇生科学という限られた世界の中では、「口対口人工呼吸が危険とはいえない」という結論になっても、より広範な医療の世界では、ユニバーサル・プレコーションとか、スタンダード・プレコーションが標準です。

医療現場で、医療者が患者に対して口対口人工呼吸を行えば、それはむしろ、不適切な事象、つまり医療事故といえるかもしれません。



賞賛は、ねぎらいの意味で、ご本人の周辺にとどめてほしいなと思います。


以前、大阪だったか、駅で心停止に陥った男性に対して口対口人工呼吸をした若い女性看護師を探しているという報道がありました。傷病者は嘔吐していたにも関わらず、それを顧みずにMouth to mouthをした勇気ある看護師という論調でした。

その後、その看護師が名乗り出たのかどうかはわかりませんが、バイスタンダーの立場だったとは言え、看護師という職業を考えたときに賞賛される行為であったのかどうかという点で、世論とご本人の受け止めは違っていることが容易に想像ができます。

自分の命を顧みずに電車の線路に侵入しての人命救助の報道。助かっても助からなくても礼賛。

かたや芸能人が無人駅のようなところで線路に入って写真を取って書類送検とか。

報道は、世論を形作り、論調を誘導するものです。

だからこそ、今回の報道スタンスが気になりました。




posted by めっつぇんばーむ at 23:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | 市民向け救命講習
2017年02月11日

脱暫定コース、ようやく日本でG2015正式BLS講習が始まります

2月14日リリースの BLSプロバイダーコースG2015【日本語版】DVD 、一足先に送っていただきました。

待望のG2015日本語版BLSプロバイダーコースDVD


所感を少々。

英語版DVDでコース開催していても、口語で翻訳が難しかった冒頭の Providers Story の部分、正式吹替版を見てみて、ああ、こういうニュアンスだったのね、とスッキリ。

ただ、あまりに息せき切ったような発声に少々違和感を感じました。

洋画の吹き替えって、どうしてもアニメっぽくなっちゃうんですよね。

せっかっくいい話をしているのに、そこが軽い感じになってしまうのが残念。

今週予定しているBLSプロバイダーコースから日本語DVDをメインで使っていこうと思いますが、Provider Story の部分や Life is Why の部分は、引き続き英語版でいこうかなと思っています。

今回のG2015-BLSプロバイダーコースDVDは、中の構成が、病院内設定(in Facility Provider:IFP)と病院外設定(Prehospital Provider:PHP)に別れたパラレルな2部構成になっています。

日本語版DVDのすべてはまだ見れていませんが、現時点、気になったのは、プレホスピタルの乳児BLS部分。

ここで、育休中のナース・プラクティショナー(Nurse Practitioner:診療看護師)が自宅で赤ちゃんが心停止になってCPRを開始、救急隊に引き継ぐ場面があるのですが、日本語版DVDでは、ナース・プラクティショナーが単なる「看護師」として翻訳されているんです。

G2015-BLS-DVD乳児PHPでナース・プラクティショナーNPが登場する場面


2年前の10月から、日本でも看護師の特定行為研修が公式にスタートしましたし、それ以前から大分や東京、宮城などで日本版ナース・プラクティショナーの育成が始まり。JNPとして認知されてきています。

そんな時代なのに、ナース・プラクティショナーを区別せずに、単なる看護師に置き換えて訳してしまうあたり、ナースの私としてはすごく気になります。

コースの進行そのものにはなんにも関係ない、どうでもいいところなのですが、ちょっとこだわりたいなと思った部分です。

英語版DVDを持っている方は、この部分、見比べてみて下さい。

きっとこの女性の迅速な対応を見て受ける印象がちょっと違うと思います。

今後、このG2015日本語DVDを使ったコース開催が標準になっていくはずですが、オリジナルの英語版でしかわからないような微妙なニュアンスの部分も必要に応じて伝えられるようなインストラクターで有りたいと思っています。



posted by めっつぇんばーむ at 13:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 最新の心肺蘇生ガイドライン2015速報