*ブログ記事の過去ログ一覧は こちら です*

2019年10月14日

eCard 印刷加工のコツ その1 印刷サイズ

AHAプロバイダーコースの修了証の eCard 化、進んできましたね。

・福井県済生会病院ITC
・日本循環器学会ITC
・日本医療教授システム学会ITC

で、おおむね eCard 移行が完了した模様。

ご存知ない方のためにご説明すると、、、

AHAのプロバイダーカードが従来の紙媒体から電子媒体に変わったんです。

ecard-guide.jpg


AHA-eCardとは

BLSとかACLSプロバイダーコースに合格すると、後日コース主催者からメールが届きます。

メールの案内に従って、CPRVerify という資格確認ページにログインすると、インターネット上に資格証が表示されるという仕組みです。

ネット上の資格証明ページからは、資格証をPDFファイルとしてダウンロードすることができます。

2ページ構成になっていて、1ページ目を印刷すると上記のような賞状タイプの証明書を作れます。

2ページ目を印刷すると、切り抜いて加工することで旧来のような体裁のプロバイダーカードを自分で作ることができます。

つまり、印刷物としてのプロバイダーカードが必要な人は自分で印刷して作ってね、という形に変わったのです。


自分でプロバイダーカードを作るコツ

PDFファイルをカラー印刷する場合、カラーレーザープリンタでないと、見た目的にちょっと厳しいです。

自宅とか職場でカラーレーザープリンターが使えればいいのですが、カラーとなると難しい人が多いかもしれません。

そこでPDFファイルをUSBメモリーに入れて、コンビニの複合機で印刷するという方法がおすすめ。

ただこの場合、注意しなければいけないのが、用紙サイズ。

AHAのwebシステムから吐き出されるPDFファイルは、A4サイズではなくアメリカ規格のレターサイズになっているため、そのまま印刷しようとすると、「ちょっと小さめにする」モードが自動設定されてしまい、印刷するカードがひとまわり小さくなってしまうのです。

ecard-size.jpg


小さくても気にしなければなにも問題はありません。

ただ、PEARSやPALSのカードは、AHAのロゴ以外に米国小児科学会(AAP)のロゴも入っているのですが、ロゴ内の文字が小さいので、サイズが小さいとかすれてしまうんですよね。

これを原寸で印刷しようと思うと、けっこうやっかい。

あまり汎用性がなくて恐縮ですが、私のやり方、ということで紹介します。


概略としては、次のようなステップです。


1.PDFファイルを「PDFに書き出す」ことでプロテクトを解除する
2.PDF編集ソフトで1ページ目を削除
3.PDF編集ソフトで用紙サイズをA3サイズに変更
4.PDF編集ソフトでトリミングし、用紙サイズをA4サイズに調整する(上下は61.58mm、左右は43.52mmをカット)

これにより、コンビニの複合機に持ち込んだ場合でもA4サイズと認識されて、余計なサイズ縮小がされずに済みます。

私の場合は、手順1はMac OSのプレビューの「書き出し」機能を使って、PDFのサイズ変更はAdobeのAcrobat Proを使用。

PDF編集ソフトも今はフリーソフトがいろいろあるようです。ページ削除機能、用紙サイズの変更機能、トリミング機能がついていれば同じようにいけると思います。

PDFのプロテクト解除は、Windowsでも印刷機能からXPSファイルに書き出せば、中身はPDFファイルです。


もっと簡単な方法もあるようにも思いますが、とりあえず、私は上記の方法でどうにかやってます。


参考まで。



posted by めっつぇんばーむ at 14:40 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2019年10月02日

子どもが倒れた! 学校の先生は傍観者でいいんですか?

私は、米国系で学んだBLSインストラクターなので10数年前からずっと言い続けていました。

救命処置は、


 ・一般市民
 ・救護責務がある市民
 ・医療者


を分けて考えるべきだと。

アメリカでは、その階層分けが昔からふつうでした。

日本だと、市民と医療者の2分しかしないから、いろいろおかしな話になっているというのは10年以上前から感じ、訴えてきたところです。


当時は、AHAインストラクターは身分を明かしてはいけない、みたいな変な時代でしたし、インターネットでの情報発信もHTMLが必要だったりしたせいで、ネットの世界でも、学校の先生は一般市民じゃないよね? みたいな論調は稀有でした。

それが今ではSNSのおかげで、あたりまえのことをあたりまえに発信する人が増えてきてうれしい限りです。


しかし、昔もそうでしたし、今でもいるんです。

学校の先生は救命処置を「ちゃんとできる」ようなトレーニングが必要で、一般市民向け研修でお茶を濁すようじゃダメだよ、と言うと、血相をかかえて猛反対してくる人が。

今までも、業界では有名な「意識の高いイキリ救命士」からはさんざん叩かれましたし、訴訟をちらつかせるなんて脅迫商法だと言われたり、ただでさえ酷使されている教員をどこまで追い詰めるんだとお叱りを受けたり。

ただ不思議なことに、当の学校教職員からクレームを受けたことは一度もないんですよね。


1.学校教職員は管理下で事故が起これば対応する責任がある
2.注意義務の下、一定水準の行動が期待されている
3.見て見ぬ振りはできない → 逃げられない
4.実際に訴訟もいっぱい起きてるじゃん
5.だったら、本気でちゃんと練習しようよ



ということを言っているだけなんですけど、なんだか知らないけど、過剰に猛反対されるんです。

なんなんでしょうね? まったくもって意味がわかりません。なにかおかしなこと、言ってます??


学校の先生もただの一般市民ですよ。素人レベルのことができれば大丈夫ですからね〜


って喧伝することになんのメリットがあるんですか?



そんな言葉に騙された教職員がバリバリに訴えられる現実、どうしてくれるんでしょう?

それに命を落としたお子さんはどうなるの? その家族は?



道端で倒れた子ども、その場にいた大人が見て見ぬ振りして通り過ぎた人がいても誰も責任は追求しません。だって無関係なんですから。

でも学校で起きた心肺停止事案は違うでしょ?

学校の先生は忙しいんです。普段の業務に加えて時間をかけて救命処置訓練をしろなんて無理ですよ、みたいなことを言ってくる人はいますが、忙しいのは部活指導のせいですかね?

部活の指導と人命救助訓練。

比べるのもバカバカしい。



必ず救命できなきゃダメというのは無理ありすぎ! という声もよく届きますが、それこそ素人の幻想、戯言。

CPRをやれば助かるなんて思ってるのはド素人です。

現実社会では、奏功して助かるほうが圧倒的に少ないって知ってますか?



実際の裁判例をみればわかりますが、助かったかどうかじゃなくて、備えていたか、やるべきことをやったかが焦点。

だから、ちゃんと備えましょうと言っているわけです。


慌てるのは人間だから当然。想定し、準備し、最善を尽くしたか?



結果ではなく、日頃の準備と心構えを問題としているのです。



posted by めっつぇんばーむ at 18:17 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2019年09月16日

応急救護、責任を問われる人と問われない人

心肺蘇生法は、結果がどうであろうと責任は問われません。

という話をよく聞きます。


一般市民向けの救命講習の中で聞くのであれば、いいのですが、これをインターネットのSNSで発信すると少しおかしなことになります。

だって、現実問題、救護活動を巡っての裁判、よく起きてますよね?

賠償金いくらという民事裁判だけでなく、業務上過失致死疑いでの送検も珍しくありません。(送検というのは警察が刑事責任ありと判断して、裁判準備を進めるために検察に移管することです。裁判結果によってはいわゆる前科になるやつです。)



大分の給食死亡事故 支援学校の元校長ら書類送検



大分県別府署は5月7日、業務上過失致死の疑いで県立特別支援学校の元校長ら4人を書類送検した。同校の当時17歳の女子生徒が2016年9月15日に、給食を喉に詰まらせ死亡した事故をめぐり、女子生徒の両親が告訴していた。

送検されたのは当時の校長、担任教諭、養護教諭ら4人(うち1人はすでに退職)。容疑は担任教諭が見守り業務を怠ったほか、養護教諭らが適切な応急措置を取らず、校長がそれらの監督指導をせずに、女子生徒を窒息死させた疑い。女子生徒は担任教諭が席を立っていた間に床に倒れ、救急搬送されたが、翌10月2日に死亡した。調べに対し4人は容疑を認めているという。(教育新聞 2018年5月7日)


kyouiku-shimbun.png



心肺蘇生や応急手当て、救護活動を巡って責任を問われないなんて、嘘じゃん! って思いません?

それでも、応急手当てのインストラクターさんたちは、今日も「訴えられません、大丈夫です。勇気を持って行動して!」と喧伝しています。

さて、この点を私たちはどう理解したらいいでしょうか?


話は簡単。

安全管理に注意義務がない人は責任を問われないのに対して、注意義務がある人は実施内容(実施しないことも含めて)に責任が発生するということです。

たまたまその場に居合わせた一般市民が善意で救護にあたった場合、その過誤については問われないことが刑法と民法で規定されています。

当たり前ですよね。

足を止めて、手を貸してくれただけでもありがとう! という世界です。


しかし、学校教職員や施設警備員、スポーツインストラクターのような、その場の安全管理に一定の責任ある立場の人が、しかるべき行動をしなかったら、業務上の注意義務違反を問われる可能性は高いと言えるでしょう。

また、実施した内容についても、通りすがりの立場の人よりは高い水準を求められるのも否めないでしょう。

備えている立場なのですから。



一般市民向け救命講習の中で、「責任は問われません。自信がなくてもいいから、勇気を持って一歩踏み出して!」ということはアリとしても、学校教職員向け講習で同じように言ってしまうのは問題。

むしろ「責任が問われる可能性は否定できません。ですから、自信が付くまでしっかり練習をしましょう」というべきでしょう。


応急手当指導員の皆さんは、この違いをきちんと認識しているでしょうか?


まだ、誰が見ているかわからないSNS上で、対象を限定せずに、心肺蘇生法は実施責任を問われない、と喧伝するのも、不幸な事故を招きかねないという点で、危ないなぁと思って、見ています。


いずれにしても、「救命できなければ」責任が問われるという言い方は適切ではないと思います。

基本的に助からないのが普通ですから。救命できることのほうが稀です。

助からないという結果ではなく、状況・立場の範囲内できちんと準備がされていたか、取るべき行動を取れていたかが焦点となります。

最善を尽くしました、と言えるかどうか。

備えがなければ、その時点ですでに誠実さに嫌疑がかかり、ほぼ負けが決まっています。




2019年01月01日

ACLS受講にBLS資格が必須であるとの迷信を解く

いま、日本国内にはACLSプロバイダーコースを開催していると公言しているトレーニグセンターが5つあります。

(5つには含めていませんが、国際救命救急協会、日本救急医療教育機構、ACLS JAPANも、ACLSトレーニングセンター格は持っています。しかし公募講習の形跡がなく、その活動実態が明らかではないので除外しました。)


・日本医療教授システム学会
・日本循環器学会
・日本ACLS協会
・福井県済生会病院
・日本BLS協会


これら5つのトレーニングセンターのうち、

・日本循環器学会
・日本ACLS協会
・日本BLS協会

の3つは、ACLSプロバイダーコース受講条件として有効期限内のAHA-BLS資格、もしくはBLSプロバイダーコースの受講歴が必要であると定めています。

逆に言うと、BLS資格・受講歴不要でACLSを受講できる余地を残しているのは、

・日本医療教授システム学会
・福井県済生会病院

だけです。


AHA的にはBLS受講歴・資格は不要!


いまさら言うまでもなく、アメリカ心臓協会としては、ACLSプロバイダーコース受講にBLS資格が必要であるとは定めていません。

これは、ACLSインストラクターマニュアルに書かれているとおりで、インストラクターの皆さんは当然知っていることですし、市販書籍に書かれている以上、公然の事実と言えます。

しかし、トレーニングセンターは、要件としてそれを定めることができる、ともインストラクターマニュアルには書かれています。

つまり、ACLS受講にBLSが必要だというのであれば、それはAHAの言っていることではなく、トレーニングセンター(日本国内の提携法人)が定めたローカル・ルール、ということになります。

ですから、ACLS受講にBLS資格が必須とすることは、間違っていませんし、なんら非難されるべきことではありません。

この点は、まずははっきり確認しておきたいと思います。



じゃあ、なにゆえにBLS資格を求めるのか?


その上で、ACLS受講にBLS資格や受講歴が必要であると独自ルールで定める団体があるのはなにゆえなのか、という点を考えてみたいと思います。


仮説1 昔の名残り


まず、考えられるのが昔のAHAルールの名残なのでは? という説。

これについては、私も正しくは知らないのですが、どうやら昔は、ACLS受講には有効期限内のBLS資格が必要だとしていた時代があったようだ、という話は聞いたことがあります。

ただ、あくまでも伝聞で、根拠は持ち合わせていません。

私がAHAインストラクターになったのはG2005に切り替わる前後の頃で、かろうじてG2000時代を経験しています。少なくともその時代のAHAルール(PAM)には、BLSが必須という規定がなかったことは、はっきり覚えています。

ですから、あったとしたらG2000以前の話。

ただ逆に、少なくとも2005年以降は、ACLS受講にBLS資格は不要だったとは言い切れます。今は2019年ですから、過去14年くらいは、AHA公式としてはBLSは必須でない時代が続いているのは確かです。



仮説2 ACLSはBLSができる前提で成り立っているから、受講すべき


この意見は、まあ、うなずけます。このこと自体は私も否定しません。

しかし、BLSができることと、AHA-BLSプロバイダーコースを履修していることはイコールではありません。

ACLSで求められているのは成人への一人法BLSとAED操作、バッグマスクスキルだけであり、それらは4−5時間のBLSプロバイダーコースでなくても習得できる一般技能です。

そしてその程度の訓練は、いまは病院の職員トレーニングとして普通にやっています。

さらに言えば、この程度のCPR技術は、仮にBLSの素養がまったくない人であっても、ACLSプロバイダーコース中のBLSセクションで十分に習得可能であるという点です。

ACLSコースの中で、いきなりBLS実技試験が行われるわけではなく、質の高いBLSの科学的背景に関するDVD解説や、ビデオを見ながらのPWW練習を経た上で、BLS試験に臨みますよね。このプロセスを考えてもらっても、ACLS受講者に完璧なBLS習得を求めているわけではないことはわかります。

ほんとに条件であるなら、つべこべ言わずにいきなり試験をして落とせばいいわけですから。


成人の不整脈起因の心停止や救急対応に限定したACLSコースでは、BLSプロバイダーコースで必須とされている小児や乳児の蘇生、窒息解除などはオーバースペックです。

医療従事者たるもの、これらも知っておくべきであるという点はまったくもって同意しますが、だからといってBLSプロバイダーコースを経ないと成人の二次救命処置を学ぶ資格がない、と言うのは暴言に近いでしょう。



仮説3 米国の医療者でBLS資格を持っていない人がACLSを受けることはありえない


米国の一般事情として、病院で働く以上、BLS資格を持っているのは当たり前で、その資格がなければ働けないというのは実態としては事実だと思います。

だから、制度上、ACLSを受ける医療者であればBLS資格を持っているのはあたりまえという意見を聞くこともあります。

このもっともらしい主張も下記の2点で私は懐疑的です。


1.ACLSコース受講と同時にBLSプロバイダー資格を取得できる制度がある

ACLSインストラクターマニュアルに書かれていますが、ACLSプロバイダーコース内で、オプションとして乳児BLSの実技試験と、BLSプロバイダーコースの筆記試験を実施すれば、それだけでBLSプロバイダーカードを発行できることが規定されています。

DVDを見て、段階的に練習して、、、という4-5時間をかけなくても、BLSの試験に合格すればAHA-BLS資格を取れるのです。

こんなオプションが規定されているということは、そもそもACLS受講に資格としてのAHA-BLSは不要であるということの証左です。


2.ここは米国ではない

米国の医療者が職業義務としてBLS資格取得と維持が求められているのが事実だとしても、ここは日本です。米国の慣習を真似る必然性はありません。

AHAが定める範囲内において、日本の事情、慣習に合わせて運用すればいいので、アメリカではそうだから、というのはなんの強制力もありません。

日本でもBLSを必須とするのであれば、それはACLSコースを主催する団体やインストラクターの強い思い、考え、判断ということになります。



結局、なぜ?


ということで、結論とすれば、なぜ日本のITCがACLS受講にBLSを求めているのか、納得できる理由はあまり見いだせないのですが、ここから先は私の勝手な想像、というか邪推です。

日本にACLSが入ってきた2003年頃だと思います。ACLSはBLSを受講した人でないと受けられないという話が浮上して固まってきたのもこの頃です。

当時からAHAの運営マニュアルであるPAMには、BLSは必須ではないということは書かれており、日本にAHA講習を持ちこんだ人たちもそのことは認識していたことと思います。

しかし、あえてBLS必須というルールにしたのでしょう。

というのは、ひとつは当時日本にはBLSですら標準化されたものがなく、本当にBLSの質が担保できていなかったからです。

医療者ならBLSができて当たり前という文化意識もありませんでした。

しかし、それから15年以上が経過し、今はどうでしょうか?

どの病院でも職員研修としてBLS訓練をしており、ACLSプロバイダーコース内BLS実技試験程度の一人法CPRとAEDくらいはふつうに教えています。

昔とは違うのです。

昔からACLSを開催しているところは、なんとなく昔のやり方をずるずるひきづってるだけなのでは?

というのが私の考える理由の1つ目です。



もう一つの理由は、経済的な理由、営業戦略なのでは? という点です。

ACLS受講にBLSが必須となれば、ACLSだけでいいと思っている医師たちからも余分に1万8千円(日本国内の平均受講料)を取れるわけですから。

当時はBLSもACLSも国内ではトレーニングセンター(当時はITOと言ってました)がひとつしかなく、独占状態でした。

ゆえの経営戦略なのかな、と。

しかし、今は10以上のBLSトレーニングセンターが認可されていますので、この独占営利的な意味は薄くなっています。かつては、◯◯で発行されたBLSプロバイダー資格でないと認めないとするところもありましたが、さすがに今はこのような縛りは撤廃されているようです。



こう考えてみると、現代日本において、ACLS受講にBLSを必須です、とする実質的な意味はなく、むしろ、受講者からしたら、そこでの受講を敬遠するマイナス要因でしかないんじゃないかな、と思うのですが、いかがでしょうか?


最新版のACLSインストラクターマニュアルでも、トレーニングセンターがBLS必須とする権利は認められているので、ポリシーをもってやってるならいいのですが、時代も変わってきたことですし、顧客目線で抜本的にも直してみてもいいのでは? と思う次第です。




posted by めっつぇんばーむ at 19:38 | Comment(0) | ACLS(二次救命処置)
2018年12月21日

AHA講習に義務化 CPRフィードバック装置は諸刃の剣?

さて、気づけば年末ですね。

2019年がやってくるわけですが、この年末年始はAHAインストラクターにとっては、特にざわつく落ち着かないときかも知れません。

2019年1月以降は、成人CPR講習にフィードバック装置を使うことが義務付けられるからです。さらには、eCardへの切り替えを検討しているトレーニングセンターも多いことでしょう。

フィードバック装置に関して言えば、世界中のすべてのAHA講習に適応されますので、いまはフィードバック装置追加購入の駆け込み需要で、品薄状態となっているようです。先日、米国のディストリビューターに問い合わせたインストラクター仲間は3ヶ月待ちと言われたそうです。


AHAとしては、今回のフィードバック装置必須化のために2年前からアナウンスを始めて、その有用性のPRに努めてきました。

質の高いCPRを追求すべきなのは言うまでもありません。

その質を主観的評価にするのではなく、定量的に評価しましょう、といわれているのがACLS。

ACLSでは胸骨圧迫の質に関して、100〜120回/分とか少なくとも5cmというある救助者側の主観的な評価ではなく、呼気終末二酸化炭素濃度や、拡張期血圧といった生理学的な代理指標に着目した科学的な質コントロールが提唱されています。

そういった科学的な定量的評価と、徒手空拳的なBLSの主観的な質評価の間に位置するのがフィードバック装置です。

深さ、テンポ、戻り、中断時間などを表示し、修正の指示をくれる機種もあります。

非常に有用な道具ではあるのですが、トレーニングにおいて使用する場合は注意が必要、と私は考えています。

日頃から離床でフィードバック装置を使っている施設でのBLS講習はすべての練習においてフィードバック装置を使うべきでしょう。

しかし、皆さん、ご存知の通り、フィードバック装置を臨床でルーチン使用している施設はごくごく一部です。

現場で使わない道具であるフィードバック装置を練習で使う意義。

これは、練習者が自身のCPRの質を、インストラクターの主観ではなく、客観的に自己評価できるという点では意義があるでしょう。


しかし、大事な視点として、現場にはフィードバック装置はない、というのを忘れてはいけません。

講習中に終始、フィードバック装置を使用すると、受講者はフィードバック装置のメーターに依存するようになります。

これは、BLSプロバイダーコースの10分間のチーム蘇生の場面でフィードバック装置を使うと顕著です。眼の前で繰り広げられるCPRではなく、モニター画面をじっと見るようになるのです。


ACLSでは、モニターばかり見るな! とはよく言われますが、おなじ現象がBLSでも起きてしまうというのは皮肉な話です。


AHAとしてはフィードバック装置をコース中、使わなくてはいけない、とは言っているものの、具体的にコース中のどの場面で使うのかという具体的な指示はありません。

どの場面でどう使うかという点をインストラクターはよく考えたほうがいいでしょう。

フィードバック装置は自己点検的に使いつつ、最終的には機械を頼らなくても自身の勘どころとしての圧迫のテンポを身につけられるように指導をすべき、と私は考えています。

その目的のための補助装置として活用するならフィードバックは極めて有用なものでしょう。


インストラクター側の認識と使い方によっては、受講者のCPR能力を潰すことにもなりかねない。

そんな本気度をもって、インストラクターはフィードバック装置の活用法を真剣に考えないといけません。





posted by めっつぇんばーむ at 22:37 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2018年09月24日

何が変わった? G2015 PEARSプロバイダーコース

悲願だったPEARSプロバイダーコースの完全日本語化。

それが2018年9月5日、ついに叶いました。

PEARSプロバイダーコースDVDPEARSインストラクターマニュアル の公式日本語版が発売開始になったのです。

PEARSプロバイダーコース インストラクターマニュアル公式日本語版G2015


思えば、私がPEARSと関わるようになったのは、2009年頃、AHAがPEARSコースを新たに開発したAHAガイドライン2005の時代からでした。

当時には米国でPALSインストラクター資格を取ってきた一部の日本人が国内で細々と開催していただけでした。私は主にその広報担当として、日本でのPEARS定着に努めてきました。

2015年には、PEARSプロバイダーマニュアルの日本語版(旧2010ガイドライン準拠)が制作されましたが、自費出版の扱いで、一般流通には乗らず、しかもインストラクターマニュアルやコースDVDは日本語化されなかったため、日本ではPEARSは公式講習だったのかと言われれば、あやしいまま今日まで来ていました。


それが、ようやく約10年ぶりに完全日本語化。うれしい限りです。


さて、G2015版でPEARSプロバイダーコースがどう変わったのか、ざっくりレビューします。


1.シミュレーション必須化

G2010版PEARSでは、コース進行を机上ディスカッションと、マネキンの前に立ってチームを組んで進行するシミュレーションの2つの進行方法を選べました。(受講者じゃなくて主催インストラクターが決める、という話です)

もともとはG2005時代は、シミュレーションが省略できるなんて、考えられなかったのですが、この5年間、やってみてAHAもわかったんでしょうね。シミュレーションなしのPEARSはありえない!

ということで、G2015では、晴れてシミュレーションは省略不可ということで落ち着きました。

インストラクターマニュアルでは、「レッスン11 総まとめ」ということで、80分の時間が取られています。

部屋に入って最初に患者を見たところから、人を集めて、評価・介入をし、最後は医師などに引き継ぎを行うところまでを、チームシミュレーションとして行うことが規定されています。

おもしろいことに、インストラクターマニュアルには「シミュレーションの場所に椅子を置かない(誰も座っていてはいけない)」とわざわざ書いてあります。

not-sit.jpg


机上の言葉だけの脳内シミュレーション(?)ではダメですよ、と、わざわざ牽制してあるのが興味深いですね(笑)


前回のガイドラインでシミュレーションを省略していいという愚策を打ってしまった反省なのか、今回のインストラクターマニュアルでは、他のコースにないくらいシミュレーションという教育技法のロジックと有用性について詳しく書かれています。

シミュレーション教育を勉強している人は一見の価値があるかもしれません。


2.スキルステーション必須化

PEARSにおけるスキルステーションとは、エアウェイや酸素マスク、ネブライザーなどの実際の使用方法を現物を使って実習させることを言います。

これもG2015では省略不可のものとして復興しました。

今回、工夫されているなと思ったのは、3症例ある呼吸器ケースのテーブル・ディスカッションのあとに、それぞれ受講者の一人をマネキンの前に立たせて、呼吸器系の観察と評価の流れを実演させるところです。

実際のところ、マネキンは苦しそうに息しているわけでないし、マネキンを見てもなんの情報も得られないのですが、マネキンを前に前にして「胸の動きを見ます、陥没やシーソー呼吸の有無は、、、」などと、受講者が得たい情報に自らアプローチすると、インストラクターが呼吸様式を演技したり、言葉で情報を提供して、アセスメントを進めていくということを体験させます。

答え的にはわかっていることでも、あえて人間を模したマネキンの前で行動させることで、机上訓練の一歩先を盛り込んでいるんだなというのがよくわかります。

この過程で、最終的には酸素投与やネブライザー投与も、実際の器具を使ってマネキン相手に実施させることをしてください、というのがインストラクターマニュアルに規定されています。



3.その他

その他、インストラクターマニュアルを見ていて感じるのは、受講者個々の理解やバックグラウンドに合わせて、質問の難易度を変えたり、シミュレーション・シナリオをアレンジして、受講者すべてにとって有意義な講習となるように調整・変更を図るのがインストラクターの役割であることが強く打ち出されているという点です。

これはシミュレーション教育とか、成人学習理論からしたら、至極あたりまえの話なのですが、古くからAHAインストラクターをしている人たちにとっては、AHAのレッスンマップは何が何でも変えちゃいけないとか、勘違いしている人が多いことから、ここまではっきり書かなくちゃ通じないのかなと感じました。

また、サイエンスとしてはPEARS領域の内容はほとんどガイドライン改定に伴う変更はありませんが、PEARSのゴールとしては、安定化だけではなく、その先の治療(サルブタモール噴霧やアドレナリン噴霧)にも踏み込んできている印象があります。

さらには、敗血症ガイドラインが改定されたこととも関係あると思いますが、輸液のボーラス投与のリスクについても強調されるようになったものG2010版からは変わったところかなと思います。



筆記試験問題、公式日本語版の訳に注意!

さて、今回、PEARSプロバイダーコース筆記試験問題も日本語化されていますが、翻訳がかなりざっくりしたところがあって、不正確というか受講者を惑わす部分が大きいなと言う点を懸念しています。

詳細はここには書けませんが、日本語版の試験問題だけを読んだのでは正しく解けない問題がいくつかありますので、試験の際には英語版も見てもらう必要がありそうです。このあたりは主催インストラクターがそれぞれ工夫しなくちゃいけないところですね。




さて、日本国内のPEARSはいまは移行期で、古いまま開催しているところもあれば、新しいDVDで開催しているところもあるし、、、ということで安定していません。

おそらく年明けくらいには完全移行すると思うのですが、それまでは、受講を考えている人は、最新のG2015正式版なのか、古い教材を使ったG2015暫定版なのかを、よく確認してから申し込みをすることをおすすめします。




posted by めっつぇんばーむ at 20:15 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2018年09月18日

BLS Healthcare Provider カードはすでに無効です。

Twitterで少し話題になっていた件について少々。

比較的最近、BLSプロバイダーコースを受けた人が受け取ったプロバイダーカードのデザインが、どうもおかしい、ということが話の発端です。

そのカードというのが下記のもの。


古いG2010版のAHA-BLSヘルスケアプロバイダーカード



そう、G2010時代の「BLSヘルスケアプロバイダーコース」と呼ばれていた時代の旧デザインカードだったのです。



今は、AHAガイドライン2015正式コースに完全移行しているのに、古いカードを出し続けているのって、いいの?



その答えは下記のとおりです。


BLSヘルスケアプロバイダーカードは今は無効




歴代のAHAカードの遍歴が参照できる the Course Card Reference Guide という資料によれば、この旧HCPカードは2016年4月16日以降は、発行禁止になっていることがわかります。

したがって、2年後の2018年4月以降は、このカードは世の中に出回っているはずはなく、資格としては完全に無効であると書かれています。



しかし、おかしなことに2018年に入ってからも、このデザインのカードの発行を受けた人がいるらしいのです。



なぜ、古いカードが発行されてしまったか?


勝手な推察ですが、カード発行業務をしているトレーニングセンター(日本ではITCとも言います)が、古いカードをいっぱい買い込みすぎて在庫がはけていないんでしょうね。

AHAプロバイダーカードやインストラクターカードは米国AHAからではなく、AHAと提携した日本国内法人(ITC)から届きます。

ITCは、プロバイダーカードの原紙をAHA代理店から購入し、国内事務局で氏名や有効期限を追加印字して、受講者に送っています。

カード自体は24枚単位で販売されており、通常、ITCはそれを何百枚も事前購入してストックしているのです。


ガイドライン切り替わりの時期だと、デザイン変更の可能性があるものですから、購入数・ストック数は慎重に調整していくものです。そして、新コースに移行した後は60日という移行期間が設定されますので、その間に旧カードはすべて吐けるように調整していくのがトレーニングセンターの役割です。

どうしても余ってしまったカードは、代理店に返品できるといいのですが、受け付けてくれないみたいで、結局捨てることになります。

それにしても、2年以上たった今も古いデザインのカードを出し続けているとすると、ずいぶんと買い込んじゃったんだな、もしくは、コース開催数があまりないところなのかな? と推察します。



受講者への不利益は?


さて、不幸にもこの旧カードを最近受け取ってしまった受講者はどうなるのか?

まあ、日本国内での話なら、気にしなくていいと思います。

そもそも日本でこのカードを資格として提出しなければいけない場面というのは、あんまりないはずだし、資格提出を求める立場の人も、このカードが公式には無効だなんて知らないと思いますので。

ただ、問題は、米国に留学するとか、米国で働く、米国の何かの資格認定のための提出が必要という人の場合です。

米国内では、このカードはもう出回っていませんし、無効であるとはっきり宣言されているわけですから、通用しない、もしくは偽造と疑われる可能性があるかもしれません。

その点、心配な人は、発給を受けたトレーニングセンターないしは、受講したサイトの事務局に新しい現行のBLSプロバイダーカードの再発行を相談(というよりクレーム?)してもいいかもしれません。


その場合の根拠となる the Course Card Reference Guide は米国AHAのウェブサイトで、誰でも見れる形で公開されていますので、リンクをたどってみてください。









posted by めっつぇんばーむ at 11:54 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2018年08月27日

AHAプロバイダーカード、日本もeCardに変わるのかな?

ここのところあまり更新していませんでしたが、今どきのネタとしてeCardのことを書いてみようと思います。

AHAのプロバイダーカード。BLSやACLSに合格後に送られてくるあの英文のカードですが、あれがなくなるという話題です。

この方向性は数年前から打ち出されており、AHAとしては、段階的に普及を進め、今年1月には米国内ではすべてのトレーニングセンターにeCardを発行することを求めるに至りました。まだかろうじて過渡期のようですが、ちかぢか紙のプロバイダーカードの販売が停止されることが決まっています。

今は、まだ紙のカードとeCardが混在していますが、すでに米国内では、紙のカードはold fashionという空気感になってきています。


さて、このeCard、読み方としてはイーカードですが、どんなものかというと、e-mailと同じ語法ですので、電子カードとでも訳せばいいのでしょうか。

簡単にいえば、形がある紙ではなく、インターネット上の電子データとして存在確認される証明書ということになります。

○○プロバイダーコースに合格すると、AHAからメールが届き、そこにあるリンクをクリックすると、専用ページでのパソコンやスマートフォンの画面表示として資格証明を確認できるという形になります。

今までは、ACLS資格を取ったといったらプロバイダーカードを見せたり、そのコピーを提出したりしたわけですが、eCardでは、専用ページにアクセスしてスマホの画面をちらっと見せて、資格証明をする時代になったということです。

eCardは、パソコンやスマホ画面での表示以外に、賞状のような形で印刷したり、名刺サイズのカードに印刷することもできるようになっています。

従来のプロバイダーカードでは、唯一の資格証明が紙切れ一枚という形でしたが、eCardでは、いくつかのパターンで資格証明ができ、そのオリジナルはインターネット上の電子データですから、紛失のリスクがなくなったのがeCardの長所です。

eCardの詳細は、日本国内で活動しているUSインストラクターの方たちがホームページで解説してくれているので、そちらを参照してください。


AHA eCard(イーカード・電子修了証)とは - AHA岡山BLS
http://jemta.org/ecard/ecard.html

AHA資格 電子認証システム eCard (イーカード)とは【BLS横浜】
https://bls.yokohama/ecard.html


今のところ、日本国内でeCardを発行しているのは、USインストラクターと呼ばれる米国のトレーニングセンターと提携して活動しているインストラクターだけで、その数はおそらく10〜20人程度と思われます。

eCardは米国の話で、日本ではほぼ無関係の話ではあったのですが、先ごろ、日本の国際トレーニングセンターの代表者の集まりが開かれ、日本でも2019年1月で、紙のプロバイダーカードの供給を停止するという話が持ち上がりました。

つまり、来年の1月以降、日本でもeCardへの完全移行の可能性が具体化してきたのです。

日本においては、CPRverify(AHAインストラクターの皆さんは聞いたことありますよね?)からインストラクターがRosterデータを登録することでeCardが発行されるシステムにしたいみたいで、去年あたりからCPRverifyの促進キャンペーンが行われていました。(米国のTCは別で、CPRverifyではなくInstructor Networkから登録します)

CPRverifyは日本語化されましたので、それほどハードルは高くはないとは思うのですが、日本のITCとしては、否定的な意見が多く、2019年1月のeCard移行については、AHAが最終的にどのように判断するかは現時点、未知数です。

AHAとしては、わざわざ日本のためだけに紙のプロバイダーカード原紙を製造・販売を続けるということは考えにくいことですので、日本でもやがてeCardに移行するのは間違いないでしょう。

この電子資格認証という制度は、AHAに限らず、日本では、例えばサッカーの審判の資格証も電子認証になっていると聞きます。

時代の流れ、なんでしょうね。



米国で電子認証のeCardがここまで定着したのは、病院などの雇用者が従業員のBLSやACLSの資格管理に便利という点が大きいと思います。

ご存知の通り、米国の医療従事者はBLSやACLS資格の取得と維持が、事実上必須可されているため、病院雇用者側としては、何千人といる従業員の資格チェックが大きな負担でした。

その点、eCardシステムでは、従業員からeCardコードと呼ばれる12桁の個別番号の提出を受ければ、インターネット経由で、その資格の有効性をまとめてチェックできるので、管理が簡単という絶大なメリットがあります。

日本では、ACLSやBLSの資格チェックといえば、麻酔科専門医や循環器専門医の申請の他、国際病院機能評価JCI受審のため、というくらいなので、この資格チェックシステムが活きてくる場面は限局的かもしれません。

さて、この先、どうなっていくんでしょうね?







posted by めっつぇんばーむ at 20:52 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2018年03月24日

BLSプロバイダーコース指導がいちばん難易度が高い理由

久々の更新です。

BLSに関しては、最近は後輩育成が中心となっています。

G2015コースに切り替わって、もう久しいですが、改めて思うのはBLSプロバイダーコースって難しいなという点です。

BLS、ACLS、PEARS、PALSと比べてみたら、内容のシンプルさでいえばBLSが一番簡単そうですが、ところがどっこいAHA-ECCプログラムの中で、指導という点ではいちばんやっかいなのがBLS。

なにが大変って、ひとえにビデオベースってところですね。

PWW(Practice while Watching)というDVD映像を見ながら真似して練習するAHAの専売特許的な指導法。これが最大限に発揮されたのがBLSプロバイダーコースなので、インストラクターは受講者をビデオに合わせて動くように誘導しなくちゃいけない。

これが難しいんです。

同じPWWでも「対応義務のある市民救助者」向けのハートセイバーCPR AEDコースは、ビデオの作りが丁寧なので、逆にインストラクターはビデオ操作をするだけで簡単に進行できるのですが、AHAはヘンに玄人向けなので、中途半端な省略がいただけない。

例えば、人工呼吸練習では、ポケットマスクはマスク・フォールドがいちばん難しいのに、画像をみて真似しているヒマがなく、スッと流れてしまったり。

そもそも人工呼吸を、PWW(見ながら練習)でさせるって根本的に間違っていると思うんですよね。ポケマで呼気吹き込みしている最中に画面見てたらダメ。だって、胸が上がるか見なくちゃいけないし、入れ過ぎちゃいけないわけだし。

だから、人工呼吸のPWWで画像を見て真似する部分って、マスクの当て方の部分だけなんです。なのに肝心のそこが使えない作りってなんなんだろうと思います。

こういう素直にレッスンプランとDVD通りにやっても、うまくいかないのがBLSプロバイダーコースの難しいところ。


更にいうと、DVDプロバイダーコースの最初の実技練習、傷病者評価のところなんて最悪ですよね。

反応なしで、「誰か!」と叫ぶのはいいけど、「119番! AED!」と言うまでの間にタイムラグがある。これをふつうにやったら、受講者は多いに戸惑います。

なんなの? これ? って、キョトンとしちゃいます。

これって、教育工学的に受講者のやる気を落とすマイナス要因です。特に期待して受講したAHA講習との最初の練習が、こんなワケワカメだとかなりの打撃。

AHAガイドライン2015の教育の章に書いてあるように、インストラクショナル・デザインと成人学習理論に基づいて作りましたよ、と宣言されているのがG2015講習。

だとしたら、インストラクターも成人学習理論を踏まえた展開をするのは当然のこと。

米国人向けに作られたDVDの構成によって、日本人受講者の学習意欲を削ぐ要因があるのであれば、その溝を埋めるのが日本人インストラクターの仕事です。

トレーニングセンターによっては、標準化教育なんだから「インストラクターはコース中に喋っちゃいけない」とか言っているところもあるようですけど、教材設計の背景を考えてないんでしょうね。

ふつうに考えても、高い受講料を取って、顧客に戸惑いや不快な思いをさせちゃダメじゃないですか。

BLS-2015の最初のPWW、周りに助けを呼ぶのと、救急対応システム発動とAED手配のタイミングがずれているのには、これはこれでG2015の改訂の意図を考えればちゃんと意味がある部分で、この部分は補足説明してあげないといけないと思うわけです。



一言で言えば、BLSプロバイダーコースはガイドライン改訂の本質部分がぎっしりつまっています。これ自体はBLSコースの大きな魅力なのですが、それが指導員向けのレッスンプランに書かれていないのが問題と言えます。

この点は、ガイドラインそのものをちゃんと読めば、なるほどね! とわかるんですけどね。

この違和感の謎を解いて、大筋としてのAHAの意図を汲み取って、溝を埋めていく。

これがBLSプロバイダーコース指導の難しさです。
逆にDVDなんか使わずに、自分で指導したほうがよっぽど簡単。


この難しい部分を他のインストラクターにどう指導していくのかが、俗にいうインストラクター・トレーナー(AHA的にはFacultyといいます)の力量で、さらにはトレーニングセンターという組織母体の教材設計理解のポテンシャルなんでしょうね。






posted by めっつぇんばーむ at 23:55 | Comment(0) | AHA-BLSインストラクター
2017年12月31日

AHAインストラクターに「所属」という概念は、ない。

今、日本国内には10近くのAHA国際トレーニングセンター(ITC)が認可されています。

AHAインストラクターが、プロバイダーカードを発行する公認講習を開催するためにはこれらのトレーニングセンターのいずれかと提携している必要があります。

というのは、インストラクター個人には、プロバイダーカードの原紙の購入権限がないからです。

プロバイダーカードやインストラクターカードの原紙(台紙)を購入できるのはトレーニングセンターの責任者(TCコーディネーターと言います)だけなので、公認講習を開催し、資格認定を行うためにはトレーニングセンターとの提携が必要なのです。

この「提携」と訳した元の英語の単語は alignment です。

時々、このアライメントを「所属」と勘違いしている現役インストラクターがいるので注意が必要です。

所属というと、登録しているトレーニングセンター以外では活動できないようなイメージがありますが、そんなことはありません。

AHAインストラクターには、「所属」という概念はありません。あくまでも「提携」なのです。



インストラクター資格というものは、個人に帰属する資格であり、その資格をどう使うかは個人の自由です。

インストラクターコースを受けたのがAトレーニングセンターであっても、その後、インストラクターカードの発給を受けるのがBトレーニングセンターであっても構いませんし、最初はAトレーニングセンターで活動していても、条件が変わればBトレーニングセンターと提携を変更するのも自由です。

さらに言えば、Aトレーニングセンターと提携を結びつつ、Bトレーニングセンターとも提携を結んで、両方のトレーニングセンターで活動することも可能です。

所属ではなく、提携であるというのは、こういう意味です。

日本社会的には、株式会社A社の社員でありつつ、有限会社B社の社員ということはあまりないことなので、ピンと来ないかもしれませんが、AHAインストラクター資格というのは米国文化での資格ですから、組織ありきではなく、個人が主体であり、その個人がどこと契約を結ぶのも自由という考え方に立脚しているのです。

このことは、AHAのグランドルールが書かれたProgram Administration Manual(PAM)を見れば分かりますし、AHA Instructor Networkというインストラクター専用サイトを見てもらっても自明なのですが、日本の狭い世界観の中でインストラクターになった人にはなかなかわかりにくい部分のようです。

参考まで、下記がAHAインストラクターとして登録する際のAHA Instructor Network登録フォームの一部ですが、最初から提携先は複数選択できるように Primary TC の他、Secondary TC を入力する欄が設定されています。


インストラクターとしての提携は複数登録できる



現に私も2つのトレーニングセンターと提携していて、BLSやACLSコースを開催するときは、どっちのトレーニングセンターに書類を送るかによって、プロバイダーカードの発行元がその都度違います。

どっちに登録して開催しても、私個人の活動実績ということでは変わりません。

蛇足ながら、この「提携」は、インストラクターが自分の名前でプロバイダーカードを発行するために必要な条件であって、単なるアシスタント・インストラクターとして活動するだけなら、トレーニングセンターとの提携は関係ありません。AHAインストラクター資格を持っていれば、世界中のどこのトレーニングセンターの講習会にも正式にスタッフ参加できます。


これが本来のAHAインストラクターとしての在り方です。

この提携を「所属」と勘違いしていると、いろいろと理解できない点が生じてくるんでしょうね。

組織によっては、作為的に所属という言い方をして、他の選択肢を与えない、自分のところに縛り付けたいと考えるところもあるのかもしれません。

しかし、もともと米国文化にもとづいて作られた制度で、その情報はすべて開示されています。

AHAには、日本社会の悪いところでもある「上が言うとおりにしていればいい」という文化はありませんので、AHAインストラクターとしての誇りの下、自分で情報にアプローチして、自分の頭で考えられるインストラクターでありたいですね。


posted by めっつぇんばーむ at 20:28 | Comment(6) | AHA-BLSインストラクター